〜ベナレス(バラナシ)へ〜

ムガルサライ駅からベナレスに向かう。
バスで行く予定だったけど、リキシャーマン達は
「今は選挙期間だから、バスだと込んでいて行けない」と言うので、
オートリキシャ−で行くことにしたが、道路は実にすいていて、
すいすいと走る。
しかも、こいつらの運転がまた実に乱暴で、
逆走など当たり前である。
何度も対向車と衝突しそうになる。
客を乗せているという意識がまるでない。
しかも、彼の友達と思えるやからが次々と乗っては
目的地で降りていく。
宿は指定していたのだが、そいつは別のホテルに連れていった。
僕達がどれだけ、「ここのホテルじゃない。」と言っても、
「Good hotel!」を連発する。
結局彼らは、このホテルから賄賂をもらって、旅行者を連れてくるのだ。

インドの雑踏のすごさは渋谷など比ではないと思う。
何故か?人も車もバイクもリキシャも牛も全てがごちゃまぜだからだ。
ベナレスの混み 交通渋滞

<(左)ベナレスの混雑 (左)交通渋滞>


後ろも注意して歩かないと、バイクや車にひかれそうになる。
信号もない。
クラクションがそこら中から鳴り響き、土煙がまいあがっている。
渋谷の交差点など非常に歩きやすく思えてくる。
この中にいるだけで、大幅に体力と精神力を奪われてしまうのである。

少年に声をかけられた。
シルク織りの工場を見せてあげたいと言う。
はっきりいってもううんざりだ。
それで結局シルクを買ってくれというのだろう。
仕方なしについていくと、ある家に連れていかれた。
シルク工場などではない。
なんなんだと思っていたらおやじが登場して
有名なインドの民族楽器であるシュタールを演奏し始めた。
彼は有名なシュタールの演奏者なのだそうだ。
そして彼が弾いている曲が収録されているCDを買ってくれと言い始めた。
断ると今まで穏やかだった表情が一変し、
その場にいた自称シュタールを習っている生徒どもが
うちらを囲み、ものすごい形相で
「おい、ただで演奏聴いて帰れると思うなよ。1人100ルピーずつ払え!」
と脅しをかけてきた。
正直僕はかなりびびっていたが3人いたこともあり、
断固として譲らないことに決め「おまえらが俺達をだましたんだろう?
シルク工場なんてどこにあるんよ?」と頑張った。
逃げるようにそこを出たが、やつらはずっと追ってきて罵声をあびせてくる。
なんとか振り切った。
やつらも一生懸命なのはわかるがやりかたがきたない。

ベナレスはシルクが有名な街だが、ある時頼んでもいないのにリキシャーマンに
シルクの店に連れていかれた。
彼らはシルクショップからお金をもらって旅行者を連れてくるのだ。
まだベナレスの街に着いてまもない僕はこのシルクに魅せられてしまい、
買ってしまった。
後に数多くのシルクを見て、どうも自分の買ったシルクは
生地も薄く値段もえらく高かったと思うようになった。
友達になったシルク屋のおやじは、「君はやられてしまったんだよ。
おそらく君の買ったシルクはアクリルとの合成シルクだよ。
べらぼうな値段をふっかけてリキシャ−マンと山分けするんだ。」
と言われた。
これには本当にショックで、以後シルク不信に陥ってしまった。

朝起きるとお腹が痛い。恐れていた下痢だ。
「下痢をして初めて自分はやっとインドに受け入れられたと思わなくちゃ!」
と言っていたインド通の人もいたが、やはり怖い。
コレラ・赤痢・チフス・マラリア・・・
日本では考えられない恐ろしい病気がここでは感染する危険性がある。
隔離入院になったらどうしよう。
悪い考えばかりが浮かんできてどうしようもなかったが、
安静にしていたら、2日くらいで回復した。
その後何回かはこの苦しみを迎えたが、
食べ物が辛すぎることによることだと分かった。
すこぶる辛いものが苦手な僕にとって
インドでの激辛料理の連続はたまらくきつかったのだ。
旅行中に体調を崩して
白いのがでるようになってしまった人もいた。
「地球の歩き方」で分析した結果、コレラかもしれないとなり、
必死に病院へ行くよう説得したが、
その日旅立つ列車のチケットを持っており、旅立ってしまった。
無事でいてくれー!

宿で洗濯をする。
洗濯ロープを張ってバケツにお湯をくんで洗った。
1つずつ洗っては手でしぼって干す。 安宿にて洗濯物を干す
<安宿にて洗濯物を干す>

しまいには握力がなくなる。
あー、洗濯機って便利だなぁー。
普段感じないことがひしひしと伝わってくる。



ガンジス河でボートに乗った。 これがヒンドゥー教の聖地なのか。ヒンドゥー教でない僕にもその雄大さが感じられる。

ガート
<ガート>

マニカルガート(火葬場)に行くと、たくさんの死体が焼かれていた。
煙がもうもうと立ち上って人が骨になっていく。
死体の灰はガンジスに流される。
水辺では野良犬が人肉をあさっている。
ヤギや野良牛が備えられていた花輪を食べている。
その横で人々が水浴びをしている。
ここでは生も死もガンジスに呑みこまれ共存している。
本当に生と死が一体なのだ。

朝6時に起きてガンガーに向かう。
同じ宿の人に船の上でサンライズを迎えることを勧められたからだ。
彼には行きつけのボート漕ぎのじいさんがいるそうなのだ。 ボート漕ぎのじいさん

<ボート漕ぎのじいさん>

彼は毎朝じいさんのボートに乗り、ガンジスの朝を迎えているそうだ。
じいさんのところに行くと、じいさんは一人たたずんで待っていた。
白髪で無茶苦茶ヨボヨボだけど、強そうなじいさんだ。
この人が1時間から1時間半ずっとボートを漕ぎ続けることが出来るのか?
彼は今日は乗らないということで乗ったのは僕1人だった。

じいさんと夜明け
<じいさんと夜明け。 じいさんは素早く自分のボートに乗りこむと、 ボートを岸まで近づけてくれ、僕を乗せてくれた。>

ガートはたくさんの人で賑わっている。
みんな沐浴に来ているのだ。
ガンジスに祈りを捧げている人、身体を洗っている人、洗濯をしている人、
歯磨きをする人、死体の灰を流している人・・・人人人。

祈る人 身体を洗う人

洗濯する人

<(左上)ガンジスに祈りを捧げる人 (右上)ガンジスで身体を洗う人 (左)ガンジスで洗濯をする人、洗濯板に洗濯物を叩きつけて洗う>

ここではガンジスが全ての営みを包みこんでいるうように思える。
なんというか言葉では言い表せない美しい風景だ。

そしてサンライズ。
地平線から少しだけ顔を出した太陽がみるみるうちに昇っていく。
本当に素晴らしい。そしてボートの上はすごく静かだ。
じいさんはあまり語らないが「サンライズ」とか「ビューティフル」
と言っては笑いかけてきた。
少し冷たい風は気持ちがいい。
なにもかもが心地がいい。
船の上で寝っころがって空を見上げると本当に高く
吸い込まれてしまいそうなほど真っ青だった。 夜明けとボート 夜明けとボート 夜明けと雲

←クリック<ガンジスの夜明け>

朝起きていつも通りじいさんの小船に乗り、ガンジスのサンライズを満喫!
このじいさんを紹介してくれた人は、
「初日に30ルピー(約80円)払えば、後は10ルピー(25円)の時があっても大丈夫」
と言っていたのだが、僕はよく50ルピー払っていたのだ。
今日は10ルピーにしたところ、じいさんが「50よこせ!」と始まり、
口論が始まってしまった。これは僕のミスだった。
あまりにも50ルピーを払ってばかりいたので
彼は50ルピーもらえるのが当然と思うようになってしまったのだ。
結局10ルピーを置いて帰ってきてしまった。
じいさんとはけんか別れになってしまった。

夜ガンガーを散歩していると、4歳くらいの少女が
「ガンジスにお花を流しませんか?家族が幸せになりますように!
5ルピーです。」と言って僕の手を引いて水の傍まで連れて行ってくれた。
花を流してお金を払おうとすると、形相が突然変わり、
ガンジスの水をぶっかけてきた。
「なによ、そのお金。少なすぎよ。30ルピーよこしなさい。」とわめき始めたのだ。
みんな何事かと見ている。形勢は圧倒的に不利だ。
20ルピーで手をうってもらった。
何でそんなにお金あげる必要があるのか?と責められるかもしれないが、
僕はなにかとても悲しい気持ちになってしまったのだ。
こんな小さい頃からこうやって生きざるを得ない現実が悲しかった。
インドでは義務教育がなく、小さい子が一生懸命働いている。
将来の夢が「学校に行くこと!」という子供もいるそうだ。
義務教育で学校に行ける日本は本当に幸せな国だと感じてしまった。
学校に行けないばっかりに将来職につけない子がほとんどなのだそうだ。

働く少年


<ベナレスで仲良くなった少年。写真に写ることが大好き。富士山のポストカードをあげると、 早速店に飾ってくれました。学校には行けず毎日店の手伝いだそうです。 「学校に行きたい!」と言っていました。



インドでは実に多くの子供達が働いている。
靴磨き・物売り・店の手伝い。何でもする。
僕達にも微笑かけてくれる。
僕達はなんてめぐまれた環境にあるのだろうか。
子供達だって遊びたくて仕方のない時期に違いない。
学校だって行きたいに違いない。
そう考えると僕は今何をしているのだろうと考えてしまう。

出発の朝だ。昨日は大量の蚊に悩まされて熟睡できなかった。
早朝4時頃に外で太鼓を叩く者あり、
犬がぎゃんぎゃん鳴き出すは、本当に参った。
6時に起きてガンガーのサンライズを見にいく。
今日のサンライズは今までの中で一番綺麗だった。
いつもと変わらない風景。
一人の少女が声をかけてきた。
30ルピー払えとわめいていたあの少女だ。
僕だとわかると、はっとしたように下を向いて行ってしまった。
そして自分の仕事を始める。こんな朝早くから。
彼女も一生懸命働いている。
頑張れよ!僕はベナレスの街を後にした。

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