取材・構成 水木楊 & 拒税同盟
(平成11年11月 東京・新潮社にて)

 今回は群ようこさん、初めて女性にご登場いただいた。きっかけは、群さんが税務署と税金に怒りを込めて綴った一文だったのだが、実際お目にかかってお話を伺うと、税金・税務署に向けられた憤りも、支払わされる税金の額も、われわれの予想を超えて凄まじいものだった。かてて加えて、憤怒の炎に油を注ぐことになったのが、群さん担当編集者・N女史(「新潮45」編集部、作家のS氏はその同居人)の存在であった。平穏にスタートしたインタビューは、やがて、お互いが火となり油となって、自らの税務署体験を語るどころか、他人様の節税の秘密までを赤裸々に……。
 まずは、件の一文「『税務署』と『身内』にたかられて」(「新潮45」99年11月号特集「トホホ…有名人の私の貧乏生活」所収)をご一読のうえ、本編「税務署との我が闘争」へお進みください。

対談風景
群ようこさん略歴
ユウウツな確定申告(『またたび回覧板』より)
税金童話(『またたび回覧板』より)
アニメ版「ぜいきんどうわ」byヒキタクニオ
 
水木 「『税務署』と『身内』にたかられて」拝見しました。その後、家の方はどうなったんですか。

 家はどうにか建ちまして、私がローンを払っております(笑)。私の部屋はありませんし、ただ一階と二階で母と弟が住んでいるだけでございまして。ですから、一度も行っておりません。見ると腹が立ちますので(笑)。

水木 あはは。「もう仕事はやめる」とも書いてましたね。

 仕事は減らしてゆく方針です。あまりにも税金がひどすぎるので、もう働くのが馬鹿馬鹿しくて。それで、来年は仕事の量を3分の1くらいに減らす予定なんですが、そうなると、ガクッと収入が減ります。収入と税額がほぼ同じか、収入の方が少ない感じになってしまう、そんな気配がありますね。ただ、来年度から、税額を算出する比率が変わるんですかねえ、税がちょっと優遇される、という話を税理士さんがしていましたが。

N(「新潮45」編集者、群さんの担当者) 群さんの場合は、所得税が最高税率の6割です。それが来年申告分から5割に引き下げられるから、10パーセントは下がることになりますね。

水木 すると、群さんは、どのくらい税金を取られてるんですか。

 えっと、地方税もありますから、国税と合わせて収入の半分以上ですね。

水木 ほぉー、半分以上もですか。高い税金を払って、住宅ローンの費用を「身内にたかられて」、その上に、今度は税務署から差し押さえでしたか。たしか予定納税で……。

 ええ、予定納税は、今年は収入がないかもしれないのに、税務署が去年の収入から勝手に見越して税金を取るわけです。今回、「差し押さえ予告書」が届いたのですが、期限の2カ月がたったから担保を出せと言う、確定でもないのに延滞税も発生する。こっちは払うと言ってるのにです。

水木 へえ。ぼくは今年の3月でサラリーマンじゃなくなって、町の八百屋さんと一緒の個人事業主になったばかりで、何もかも初体験なんです。しかし、確定で払わなかったのならわかるけど、予定納税でというのはひどいなあ。

 税理士さんに聞きますと、予定納税というのは、最初、税務署としては納税者のための仕組みだ、みたいなことを言ってたらしいんです。一時に払うのはたいへんだろうから、納税者の苦労を考えてちょっとずつ先に取っておけば負担も少ないでしょうということですね。それが、こちらは払うという意思を見せているのに、担保を差し出せとか、差し押さえを予告してきたりする。まあ、単に事務的な手続きの怠慢というか、いわゆるお役所仕事なんですけど。あの人たちは、とにかく取ってやるということしか考えていないので。

水木 訴えたらどうですか、「精神的なダメージを受けたため筆が進まなくなった」と言って(笑)。

 ほんと、そうですよねえ。こちらがしらばくれているのならともかく、いついつまでにちゃんと払いますと言っているのに。それで、差し押さえ予告書というのはあまりにも無礼すぎるので、私なんかよりもはるかに温厚な税理士さんが見たことないくらいに怒ってしまって。2人して怒って、これはもう一度ガツンと文句を言わないと気が済まないと、税務署に出向いたんですよ。そしたら、なんか妙に腰が低いんですよ。「ほんとにほんとに、どうも」みたいな感じで。はっきり言って感じは悪くないですよ。なんかチロリン村にで出てくるモグラちゃんというか(笑)、田舎の素朴な若者みたい若い方が担当で「ほんとうに申し訳ございません」って。それでも、こっちはガンガン怒った。こちらが払わないのはまあまずいかもしれないけども、その時点で精一杯の対応をしたのに、差し押さえ予告書を送ってくるとは、あまりにも失礼すぎるじゃないかと。結局、細かくケアをしていない。連絡しても応答してこない人がほとんどなので、その人たちと同じように対処したと、言うんですよ。

水木 来年、また差し押さえ予告書が届いたら、どうしますか。

 同じです。また、踏み込んでいって怒ります(笑)。来年も、その気配がちょっと濃厚で危ないんですけど(笑)。踏み倒す気はないから、こうなったら、顔馴染みになっちゃおうか、って。でも、その時々の資金繰りとか、家庭の事情とか(笑)、ありますよねえ。あのやり方はちょっとおかしいですよ。

水木 しかし、感心ですね。群さんは払うって気があるんですから。ぼくも払ってはいますが、非常に嫌ですね。ビタ一文払いたくない(笑)。

 はっきり言えば、国税は払いたくないですね。

水木 地方税の方は、身近な住民サービスを受けているから、まあいいだろうというようなところですか。

 群さんは特別区民税はいくらくらい払ってます、2000万円くらいですか。

水木 えっ!  2000万!

 ううん、2000万円はいかない。年間で1千600、700万円かな。1回そういう年があった。

水木 ははははぁぁ……。

 それだけ払って、ゴミを持っていってもらってる。ゴミの分別なんてお前がやれって、ほんとはそれくらいやらせたいでしょう(笑)。

水木 群さん以上に稼いでいて、払っていない人だって世の中にはいるでしょう。たとえば医者なんかも。やはり、払いたくないという前提にたっているんですね。

 そうなんでしょうね。赤字にしたりとか、いろいろからくりをつくって。

水木 群さんにも、拒税同盟のメンバーになっていただいて(笑)。

 私、インターネットで拒税同盟のホームページを拝見して、一番疑問に思ったのは、この方たちは税金を払っているのかな(笑)、ということだったんです。

水木 払っているんです。「If not」なんですよ、「さもなくば」。

 「さもなくば」、なるほど。

水木 群さんに、あれを、拒税ステッカーをさしあげましょうよ。

 拒税ステッカー!(笑)。拒税同盟の仲間に入ったら払わなくていいのかなあ(笑)、そのテクニックとは何なのだろうか、と気になっていたんですが。

 NHKの受信料不払い運動みたいなものかと思った。

 そうそう。

 ホームページを読みながら、いろいろ考えて『新潮45』の来年3月号で「拒税同盟がゆく」(仮題)という特集をやろうということになったんです。

水木 いいですねえ、特集「拒税同盟がゆく」に群ようこさん参加!(笑)。

 確定申告の時期に合わせて、「やっぱり税金はおかしいぞ」というテーマで、税金のことに関してひとこと言いたいという方々に登場してもらう予定です。水木さんはもちろん、村野まさよしさんなど拒税同盟のメンバーなどにお声をかけていくつもりなんです。群さんだけでなく、作家のなかにもたくさん憤っている人がいるわけで、浅田次郎さんとか馳星周さんとか、突然収入が増えて、ある日貯金通帳を見たらマンション一軒分が税金でなくなっていた、そういう事態が起こるわけですよ。作家は筆一本で、今は売れているけど先はどうなるかわからないと思ってやっている。たとえば今年1億円の収入があると翌年は6000万円も税金を取られる。一転して、来年500万しか収入がなくなっても、国はそれに対して何も配慮してくれない。そういう矛盾にみんなすごく苦しんでいるわけです。

水木 だから、高額納税者に投票権をたくさん与えるんですよ。それを提案しましょうよ。

 そうですよ、悪平等だけがはびこっているんだから。100票とか、高額納税者には特権を与えるべきなんですよ。ゴミの分別をしなくていいとか(笑)、日曜日でもゴミを出していいとか。それは当然で、日本の人口の全員が1割、たとえば100円の収入がある人が10円払うようにすれば、計算上、税収は十分といわれているんでしょう。それを、所得税率を6割からゼロまでにしていて、3分の1は納税してない。3分の1はじつは投票権はいらないんだけど、持ってるからいつまでたっても累進課税制の不平等が変わらない。世界中のどこをみても日本が最悪なわけでしょう。これを是正しようとしても、政治家がそんなこと言ったら絶対選挙に受からないから。

水木 政治家に期待できませんよ。

 できませんよね。納税していない人の票が強い分、やっぱり高額納税者というのはずっとこのままなんですよ。

水木 昔は、税金を払っている人にしか投票権はなかったんだから。

 それを復活させて、一定額以上の税金を払っている人だけに投票権を認めればいいと思うんですけどねえ。

 1千万票くらいあったら、すごい(笑)。2、3人当選させるのも簡単かもしれない(笑)。好きな人に立候補させて、国会議員にしてしまう(笑)。

水木 「拒税同盟がゆく」で提案したらどうでしょうかねえ、ほんとに。

 どんどんそういう提案を、つまり、高額納税者たちが何を望んでいるか。そりゃあもっと税率を下げればいいけれど、税金は払うのが国民の義務だと言われれば、まあ払いましょう。ただし、こういうことをしてくれれば、満足ですよということが何なのか、というのを具体的に聞きたいですね。

水木 怒りのシミュレーションですね(笑)。

 いっぱいありますよね。タクシーサービスとか、お洗濯サービスとか(笑)。

 それくらいのサービスがあったっていいですよ。リストラされてる人たちとか働き口のない人を国で雇って、浅田次郎さんの肩もみをさせる(笑)。税金の使い道がはっきりしてないですね。それこそやくざが生活保護を受けてベンツに乗っていて、そのやくざのところに群さんの払った税金が使われているかもしれない。

水木 使われていますよ。住専を通じてとか。

 絶対ろくでもないところに使われていると思うのよ。

水木 繰り返しますけど、政治にはあまり期待できないんですよ。だから、拒税同盟を始めたわけです。

 期待できないですよね。だって、政治家バカなんだもん。なんでこんなバカが……まあ選んだ国民がとか言うけれど、そんなこと言ったってねえ。

水木 欧米の政党がいいって言うわけではないけど、欧米では税が払いたくないっていう人も政治的な勢力になりうるんですよ。ところが日本ではみな「金をくれ、くれ」ばかりで、そういう政党がない。

 当選したら、寝返る人が山のようにいますね。それに、他の職種はよくわからないけど、物書きの場合、だいたい経費が認められないじゃないですか。水木さんもそうでしょうけれど、そのへんの経費がごまかせないというか、透明ですよね。皆ひじょうに正直な申告をしていると思うんですよ。

水木 群さんは、税金を所得税で取られるより、消費税で払う方がいいと思いますか。

 はっきり言って、消費税は平等じゃないですか。平等だからって、いいとは思いませんけど、まだマシだと思いますね。嫌だったら買わなきゃいいんだから、選択の自由があります。税率が7パーセントとか10パーセントに上がるとか、またごまかして取ろうとしてますけど。それだったらもう買わないよって、国民が選択できるじゃないですか。それに比べて、累進課税とかって、なんか「納得してないゾ、私たち」みたいなところがある。じゃあ国民みんなが貧乏になって、働く意欲をなくして、働かなくなったら国が困るわけでしょう。大きな目で見れば、自分自身の首を締めていることだと思うんですよ。累進課税の制度にはぜんぜん納得できませんね。

水木 消費税1パーセントで税収は2兆円ですから、計算上、消費税が12パーセントだったら、個人所得税はゼロでいいんです。

 うーん。だったら12パーセントでOK。

 10パーセントでも、11パーセントでもいいですけどね。

水木 使い方をしっかりしてもらうことが大切ですけどね。

 そりゃ、そうですね。でも、その方が納得できますよね。

 私も消費税の方がいいと思いますけど、収入が少ない人は高価なものが買えないとか、そういうことがあるかもしれないけど。一方で金持ちはねえ……。でも、そういうのは仕様がないことですよねえ。

水木 その一方で、社会保障が収入の少ない人の面倒をみればいいんですよ。

 そうですね。資本主義だといいながら、なんか国の仕組みは社会主義みたいな、気がする。中国に行っても、あの国のほうが資本主義みたいで。

水木 話は変わりますが、群さんは以前に税務調査に入られたことがあるそうですね。どちらの税務署ですか。

 武蔵野税務署(東京・武蔵野市)です。私の場合、当時、経費が20パーセントだったんです。それなのに調査が入った。今度「差し押さえ予告書」を送りつけてきたのは北沢税務署(東京・世田谷区)ですけど。

水木 20パーセントで入ったんですか。

 はい。それで怒ったんですよ。その勢いで引っ越しもしました(笑)。

 物書きに認められる経費って、税務署によってここは認めるここは認めないっていう決まりがないんですよね。

 そうそう。やってきた税務署員が屁理屈を言うので腹が立って腹が立って(笑)。その時に一番頭にきたのは、ビデオのことです。ちょうどビデオ評の仕事をやってまして、週刊誌なので時間のサイクルが短いので、編集者が届けてくれるのが間に合わない時には自分でビデオを借りたり買ったりすることがあります。で、そのビデオの項目を指して、若い税務署員が「これは趣味で見ているの、仕事で見ているの」、それを分けろって言うわけです。「こういう仕事をやっているので、ほとんど仕事だ」と答えたら、「ふん」と鼻を鳴らして、今度は本代のことを突っつきはじめたんですよ。本代がかさんでいるのを見つけて、「趣味で読んでる本と、仕事で読んでる本に分けろ」(笑)と言いはじめた。それで、私は切れたんです(笑)。「ふざけるな。じゃあ、そちらが言う、趣味で読む本と仕事で読む本の基準は教えてください」って言ったんですね。すると「仕事で読む本は一回で捨てる本、趣味で読む本はずっと取っておく」と答えたので、また切れた(笑)。「ふざけるのもいい加減にしろ。あんたは本を読んだことがないんでしょう」と怒りまくったら、「じゃあ、いいです」って言ったんです。「じゃあいいです、とは何事だ!」って、また怒って(笑)。ほんと、ひどいですよ。

水木 わはは。飲み食いについてはどうですか。

 私、飲まないので。一応基準があるようですが、その範囲の額だったので問題はありませんでした。

 男の作家ですと、銀座のクラブの領収書とかが莫大な額になったりするけど、群さんはそういうことはなさらないし、車も乗らないから車を買うこともないし。

 私、着物を買うんですよ。お洋服は経費と認められるんですけど、着物は資産なのでずっと減価償却なんです。税務署の認識としては、洋服は消耗品で価格の3割を落とせるけれど、着物は資産だから家具なんかと同じ。だから何年かにわたってずっと落としてゆく。さっきの差し押さえ予告の時に、税務署が「着物を担保で取る」(笑)と言い出したんですね、資産なので。私の着物が担保になるらしいんですねえ。担保としては、あとはまあ、うちの弟と母が私からもぎ取った金で建てた山の麓の家ですか(笑)。

水木 着物はお買いになった時の領収書はあるんですか。

 ええ、もちろん。税務署は、きっと質屋さんとかどこか然るべきところに査定させて、たとえば100万円の着物でも、10万円とかで差し押さえるんじゃないでしょうか。

水木 着物を隠しちゃったら面白い。

 隠しちゃう?(笑)。万が一、差し押さえということになったら、私は「じゃあ、今のようにちゃんとした状態で保管してくださいね」と言うしかないですね。桐ダンスを用意しておいて、「このタンスは担保品じゃないから出しませんよ、着物の状態がまずくなったら国の責任ですからね」って、かましてやろうかなって思っているんです。

 この間うちに税務署が来た時に、やっぱり担保ということになって、「不動産も何もありません。家の中で一番価値があるのは猫ぐらいだから、猫を差し出します、これ10万円のアメリカンショートヘアですから、持っていってください」(笑)と言ったら、「猫は餌を食うので、じゃあいいです」って簡単に引き下がりました(笑)。そういう風にどんどん意地悪してます。私なんか、その時の税務調査で切れて、税理士さん宛に「今度、拒税同盟に入ります。私もジャーナリストの端くれだから税制と戦い続けることを誓います」と書いてファックスで流したんです。税理士さんがそれを税務署に持っていって、「こんなに激怒している」と言ったら、税務署の人がその特集をぜひ読みたい、雑誌ができたら送ってください、と頼んだらしい(笑)。

 買えよ!(笑) 送ってくれとは、なんたる姿勢! 買うのが当然ですよ。

 近々、また対決に税務署に行くんですが、署長と直接対決してこようと思っている。だいたい下っ端の若造は、何でもかんでも、このご飯はどこで誰と食べたんですか、と聞いてくるけど、そんなもん、うちの同居人(注:作家のS氏)がいちいち覚えているわけがない。

 そうですよ。

 「奥さんじゃないですか」って、私の方を見る(笑)。何の根拠で、全部私が食ってるって。「ほんとに奥さんじゃないんですか」って、なめ回すように見る。私が「栄養失調でむくんでるだけだ」と言ったら、「食い過ぎじゃないのか」と言い返された(笑)。飲食代が600万円くらいあったものだから。

 えっ、600万円ってすごい額ですよ。私の場合、さっきの飲食代で……。あっ、思い出してきた!(笑)。たとえば、お茶を飲んだとき、自分の分を含めて500円、1000円出しますよね。そしたら、「自分の分を抜け!」とか言うんですよ(笑)。私、その当時、税額が2000万円くらいありましたけど、もうガックリ来てね。飲食代なんか高がしれてるのに、私の飲み食いしているのを500円単位で引けって言うんですよ(笑)。

 だいたい税務署員って、ガアーって反撃すると弱いんですよ。けっこう気が弱い。「そんな600万円もおかしいじゃないですか」と言われても、うちの同居人が「そんな仕方がないじゃないですか。だって編集者を接待しないと、俺らみたいな売れない作家は干されるんだよ」(笑)とかいろいろ言ってたら、相手が「ぼくがいろいろ調査したところ、作家先生は出版社にご馳走になるケースがほとんどで、ご馳走することはないって伺ったんですが」と反論するから、「俺は税制とか何とかよくわかんないけど、男の美学なんだよ!」とか答えてました(笑)。そしたら「そうですか、男の美学ですか」ってメモしてる。それでもうOKになっちゃった(笑)、勝ったあ!

 あの人たちって全部報告しなければなんないから、何でもメモるんですよ。

 そうそう。私なんか「最後にひとつ聞かせてください、何でうちなんですか、なんでうちに目を付けたんですか、管内にはもっと巨悪が眠っているでしょ、うちみたいな小悪を!」(笑)って。

 「悪」じゃないんじゃないの。

 あ、悪はしてませんなんて……(笑)。奴ら、なんでもメモるから怖いんですよ。

水木 経費が20パーセントで群さんは調査に入られたということですが、いったいどういうわけでしょうねえ。

 どうもローラー作戦をやってたらしくて、物書きがあの時は軒並みやられたんです。

 その年のターゲットを定めて、「物書き年」とか「ナントカ年」というのがあるんですよね。

 話によると、税額っていうか、収入で調査に入る時と、それでこぼれてしまう人は職業でローラーをかけることがあるそうです。私が最初に入られた時は、経費は20パーセントにもかかわらず業種で入られた。たしか、私が怒ってその時のことを書いた直後に、ばたばたばたばた同じような文章が載りました。夢枕獏さんもたしか書いてましたね。

 群さんは「税金童話」って原稿を書いてますね。ようこちゃんが本を出すと、おまんじゅうを10個もらって、最初に1個取られる。いぢわるな「くに」のおじさんが暗闇にいて、ようこちゃんは頭を叩かれて残りのおまんじゅうをもぎり取られて泣く、っていうお話なんです。
夢枕さんの場合は旅行の費用のことで、税務署員に「旅行は仕事ですか、プライベートですか」って聞かれて、「そんなの取材ですよ」って答えたんだけれど、「楽しかったですか」って聞かれたもので、「いや、なかなか楽しかったですよ」と口にした。その途端に「じゃあ、遊びです」って決めつけられた、と書いてらした(笑)。

水木 ひどいなあ、はははは。

 甘言を弄されて、つい、ね。世間話みたいに、どうですかって聞かれて。楽しいのはプライベートだって言われてね。これからは、どんな質問をされても、「楽しいわけないでしょ、仕事なんだから」(笑)って言わなきゃならない。それくらい狡猾なんですね。

 誘導尋問なんですよ。屁理屈というか、ほんと。

水木 ぼくは、税務署が調べに来たらそのことを同時ドキュメントで書くぞ、って公言してるんですよ。敵は、拒税同盟のホームページを見て、調べているみたいですよ。そっちの筋の人間が「ちゃんとした趣旨ならいいんです」(笑)、って言うんですから。

 それはいい考えですね。

 今度の「拒税同盟がゆく」特集でも、どんどん書いてもらおうと思ってますけど、作家たちも群さんの「『税務署』と『身内』にたかられて」を読んで、「よくぞ書いてくれた」という感想をお持ちなんですよ。

 作家のなかでも、小さいお子さんをお持ちの方でオムツ代を経費で落としてらっしゃる方がいますね。だから、そういう人は調査に入られるととても困る。大なり小なりそいうことはみなあるんですね。

 その人なんか、ブランコ代と紙オムツ代を全部経費にしてたんですが、税務署が入るっていう時にビビって「おれはオムツをしてブランコに乗ってないと原稿が書けないんだ!」って(笑)。それを聞いて、絶対そう言わないと私は許さない、と。

 税務署が許しても私は許さない!(笑)

 その格好で出てこい!(笑)

水木 わはは。Nさんは税金のことに詳しいですねえ。

 さきほどお話しましたけど、たまたま同居人のところに税務署がやってきたので急に詳しくなったんですよ。

 知ると、けっこうひどいでしょう。サラリーマンの方も気の毒だけど。

 サラリーもらってる私たちの方がよっぽど楽してるなあ、と思いますよ。

水木 実際はねえ、中小企業の親父さんたちはあらかじめ一定の金額を用意しているケースが多いんですよ。修正申告を前提にね。

 ええ! ひどい。

水木 二つの帳簿を作っておいて、税務署に入られると、修正用の帳簿で申告し直す。そうすると、税務署は簡単に引き下がるんです。

 お土産というか。

 それ、お代官さまと同じじゃないですかあ(笑)。

 中小企業というか自営の方というか、身内に税務署員がいると調査が入らないとか、税務署に講演をしにゆくと、その時の領収書が税務署を撃退してくれるとか。そういうことがあるようですね。

 封じ紙!(笑)

 お札みたいなものですね(笑)。評論家の某も、かつて一度、国税に講演に行ってるんだけど、そのお札をもらいに行ったのね。

群・N ♪♪ お札を納めに参りますぅ〜 ♪♪

 私、税務署から「原稿を書いてくれ」って頼まれんだけど、その時に「よおっーし、滅茶苦茶書いてやるゾ」って思ったのね。ところが、「ただし、なごやかなものにしてください。税務署の批判はお避けください」って言うから、断りました。

 その腹いせで税務調査に入られたんじゃないの(笑)。引き受けていれば、5000円くらいの原稿料をもらって、その領収書を貼っとくと、お札になったのに。

 税務署嫌いの私がそうするのは、魂を売るのと同じでしょ(笑)。 税務署に弱みを見せるのは嫌だから正々堂々と闘うんだけれど、やっぱり、うーん税金は高いわ。だとすれば、働かないということしか対抗策はないですねえ。

水木 拒税同盟に入ることですね。

 ははは。

 うちの同居人も入れてやってくださいよ(笑)、入りたいと本人が言ってましたから。

水木 じゃあ、拒税同盟の顧問団を作って、そこに加わってもらいましょう(笑)。きょうは、ありがとうございました。


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