――ダン!!―― 教会の扉付近で大きな音がした。それが一瞬の始まり。 ようやく収束し始めた混乱の渦。それに向かって駆け出す影がひとつ。手には拳銃。 (亜麻色の…三つ編みの…) 低い姿勢。疾風のごとく駆けるなつみ。その瞳にうつるのは亜麻色。 「なつみちゃん!?」 祐一の目が、まだ名しか知らぬ少女を捕らえた。何が起ころうとしているのかもわからず反射的に名前を呼んだ。 なつみ以外、誰もが状況を把握していない。 いや、ある意味なつみも状況を把握できていないと言える。茜の心の動きを知れば、行動は別のものになったかもしれない。 「店長さんを殺された怨み! 『居場所』を奪われた怨み!」 茜の反応が遅れた。祐一とのやりとりで緊張感が消えていたこともあるが、それ以上に『居場所』というセリフに体が硬直した。 駆けながらの発砲。素人では当たるのは奇跡といえるだろう。 だが奇跡は起こった。 哀しき殺人鬼。いや哀しき少女の鮮血が舞った。 衝撃を受け、茜の体が後方に跳ねる。そして倒れた。 「なつみぃぃ!!」 祐一が激昂し、硫酸銃を抜く。 しかしそれより早く。なつみは銃を突きつけた。 自分のこめかみに。 (!?) わけがわからなかった。誰一人としてなつみの行動の意味がわからなかった。 「もう私には『居場所』が無いの」 なつみの声はなんというか。普通だ。日常の声だ。 表情は泣き笑い。 「もう生きていても仕方ないのよ」 生きていても仕方ない? ふざけないでよ! この島には生きていたくても生き続けられなかった人がたくさんいるというのに。 由依だって生きたかったはずだ。 水鉄砲を構えている男にしたってそう。 「――さぁやってくれ」?? ああ! どいつもこいつも!! 無駄に死ぬんじゃないわよ!!!!! 晴香は0.1秒で考えた。多少の混乱もあったが。 「あんたたち!! いいかげんにっっ!!!」 なつみの指が動いた。 だが…。銃声は響かなかった。 【茜 派手に血を出して倒れる】
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