| 1:傭兵稼業 |
| 2:お仕え稼業 |
| 3:始まり |
| 4:理由 |
| 5:特務部隊 |
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1:傭兵稼業 ガーネシア大陸北東部に位置するソリテン王国の首都ラリィ。 その大都市の郊外にある酒場で、3人の男が話し込んでいる。 「荷物の護衛か…、俺達はそんなつまらん仕事は受けてないんだが。」 金属鎧を身にまとった、精悍な顔つきの長身の若者が、いかにも興味なさげにそう口にする。 「それは、もう聞きました。でも、お金がないのでしょう?お1人1日500シルバ…悪い話しじゃないと思いますが?」 こちらは、丈夫で動きやすそうな旅装束に身を包んだ中年の男だ。静かな笑いを称えながら話すその姿は、いかにもやりて商人といった雰囲気をかもし出す。 「まあ、いいんじゃないの。それより、俺はなんか食いたい。」 最後の男は、軽装の皮鎧を身にまとった美青年で、女性が羨望の眼差しを送るであろう金髪の持ち主である。 彼らの会話は、この手の店では珍しくもないありきたりな話だが、当人達にとってはまさに死活問題で、避けては通れないのだ。 ただ、それとは別に珍しい事が一つある。 それは、人口10万を超える大都市の酒場であるのに、客が3人だけという事だ。 しかし、それも当然の事かもしれない、なぜならこの店は酒場とは名ばかりの、あばらや同然の場末の店だからだ。それでも、夕飯時にはもっと客が入るだろうが、今はその時間には少し早い。 「なんか食いたいだと!?お前がただのショートソードに、1万シルバも出さなきゃこんな事に、なってないんだぞ!」 「だって、前に買ったやつは、そのくらいしたぞ。」 「それは、魔力がこもっていたからだろ!」 「まあまあ、そうケンカされずに。じゃあ、1日500プラス必要経費でどうです?もちろん食費も、必要経費に含みます。」 商人風の男が、ここでまたニコリと笑う。 中年になっていても、人好きのする笑いが浮べられるられるのは、彼ら商人にとって最高の武器といえるだろう。 それに、500シルバといえば、並の職人が1週間かかって稼ぐ金額だ。 「…分かった、それで手を打とう俺は、ボーントレット。そっちは、イゼル…頭は悪いが、腕は確かだ。」 金属鎧の若者…ボーントレットと名乗った男は、しぶしぶという感じで答える。 「そうですか助かります。では、明日の朝一で出発したいので、開門前に北門の広場に来てください。それと、今日の分は私の奢りという事で…。」 やはり笑いながらそう言った男は、100シルバ程をテーブルの上に置いて、店を出て行く。 その姿を見つつ、ボーントレットはため息をついた。 「何が気に入らないんだ?いい人そうじゃん。気前もいいし。」 そう言いながら、イゼルと呼ばれた金髪の若者は、さっそく店の親父に料理の注文をはじめる。 「そういう問題じゃない。まあ、お前に言っても分からんか…。」 確かに、コーネルと名乗ったあの商人は悪い人間には見えかったし、金払いもいい。 しかし、仕事の内容が気に入らないのだ。 自分達がこの仕事を始めて5年になるし、剣の腕にも結構自信がある。 それなのに、傭兵仲間ではまだヒヨコ扱いされる。その理由は、自分でも分かっている。 それは、自分達がつまらない仕事でも割の合わない仕事でも簡単に引き受けるからだ。 そして、そのどんな仕事でも受けなくてはいけない理由が目の前にいる。そう、イゼルだ。 イゼルとの付き合いは、自分がダナードの実家を出た時、つまり傭兵を始めた時からだ。 その前にイゼルが何をやっていたのか知らないが、やけに身のこなしのいい奴で、剣で彼を捉えた者は今までいないし、盗賊としての修練もつんでいようだ。 その上なぜか、魔力剣まで持っていた。本人は、買ったと言っているのだが…。 しかし、金使いが荒い上に、世間知らずというか常識がないというか…、ようするになにかズレているのだ。 ついさっきも、持っていた魔力剣をどこかに”落っことした”あげくに、代りに買った普通の剣に、1万シルバ…相場の50倍も支払っている。 1万もあれば、2人でも半年は食っていける。 つまり、その間はいい仕事を選ぶことが出来たはずなのだ。 それなのに、こいつはそんな事を気にもしない…いや、気づいてすらいない。 場末の酒場で料理を、ガツガツと食べる金髪の美青年…その姿を見ながらまたも、ため息を一つつき・・・「まあ、いいか。」とボーントレットは思うのである。 |
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2:お仕え稼業 ソリテン王国の首都ラリィ。 その高級住宅街にある邸宅で、2人の男が口論を交している。 「出撃!?またですか!?」 重厚な金属鎧を身にまとった、若い男が大声をあげる。 「そうだ、何か問題でもあるのかね?お前は早く騎士になりたいのだろう?」 仕立ての良い絹地の服を着た中年男が、さも当然のように言う。 前者は直立し、後者は椅子に座ったまま話しているのだが、これは騎士見習と騎士という2人の立場を形として表したものでもある。 「しかし、我々は昨日任務から戻ってきたばかりです。」 「分かっている。だから、今日は休んで明日出発しろと言っているのだ。貴様の変わりに、お前の名で志願してやったのに無駄にする気か?」 通常、国内で問題が起きた場合は、その近くの砦を守る兵士や騎士が派遣される。 しかし、それでは対応できない事態が起こった場合、志願者を募りその中から選抜したメンバーで部隊を構成し、その任務に当らせる。 そしてその場合、任務を達成した時の手柄・褒賞等は、通常を上回るので志願する者も多い。 「・・・・私が、ランド様にお仕えして3年、その間に100度近く志願出撃しておりますが、国王陛下に謁見した事も、昇格試験を受けさせて頂いた事もありません。これは、どういう事でしょうか?」 見習いは、あくまで事務的な口調で、しかし鋭い視線で問う。 「そんな簡単に・・・貴様、いったい何が言いたいのだ・・・?」 ランドと呼ばれた騎士は、押し殺した声でそう答え、見習いを睨みつけるが、見習いは恐縮するどころか、どうどうと睨み返してくる。 そして、最初に目をそらしたのは、ランドの方だった。 はた目に見ても、細面の中年男より黒髪を短く刈上げた若者の方が、迫力・圧力で数段勝っていたと言えるだろう。 「私は、今日をもって騎士見習いの資格を返上し、お暇を頂きたいと思います。よろしいですね。」 ため息を一つついた見習いは、返答を待たずに出口の扉に向かって歩き出す。 「待て!!貴様、突然辞めるだと!ソリテン王国にたいする反逆だぞ!?」 本来色白の顔を、真っ赤に紅潮させたランドは椅子から立ち上がりそう怒鳴る。 「私は、あなた個人に仕えていただけで、ソリテン王国や国王陛下に忠誠を誓っておりません。いや、誓わせて頂けなかったというのが正確な表現でしょう。」 振り返りもせずに、そう答えた若者はドアノブに手を伸ばす。 「・・・・っく、許さんぞ!パイク!!貴様、見習いの分際で騎士である・・・、仕えるはずの私に、そんな口をきけると思っているのか!?」 そう絶叫する姿は、普段の冷静さが微塵も感じられない。 「だから、もう辞めたと言っているのです。」 ドアに手を伸ばしたまま、騎士見習い・・・パイクは、そう答える。 「許さん・・・騎士である私を愚弄とは、許さん!!」 ついに激発し、壁に立てかけてある剣に手を伸ばす。 「・・・騎士ともあろう者が、私情に流され剣を抜くおつもりですか?」 「減らず口をたたくな!、・・切り捨てる!!」 「そうですか・・・、では私も身を守るために戦うしかありませんね」 パイクは、ここで初めてランドの方を見返した。 その目には、怒りの炎というよりも落胆の光を宿している。 しかし、ランドを脅えさせるには、その言葉と目だけで十分だった。 必ずしも、騎士が騎士見習いより強いとは限らない。 騎士の中には文官タイプの人間もいるし、世襲でその地位に付く者も多い。 ランドもそういったタイプの騎士で、事務処理能力は決して低くはないし、家柄も申し分ないと言える。 パイクもそれを見込んで、見習いとして仕えてきたのだ。だが、剣の腕は・・・。 「剣を納めて下さい。そうすれば、私はこの扉から出て行きます。」 ランドを見続ける目は、落胆から失望、哀れみへと変化していく。 「・・・・。」 もはやランドは、握り締めた剣を見るだけで、何も口にしなかった。 そして、それはパイクが部屋を出、館を出た後もしばらく続いたのだった。 「ハァー、さて、これからどうするかな・・・・。」 パイクは、騎士見習いを辞めたからといって、これから先何をするか考えていた訳ではない。 田舎に帰るか、傭兵にでもなるか、新たな主人を見つけてもう一度騎士を目指すか・・・。 いや、それは無理だろう。 3年も他の騎士に仕えていた上、その主人にあれほどの恥をかかせたのだ。 誰も見習いにしないだろうし、成れたとしても騎士に昇格できるはずも無い。 だが・・・・、 「・・・・いや、そうでもないか・・・。」 笑みを浮べるその視線の先には、魔法王国の名で呼ばれる、ダナードの紋章をつけた馬車が止まっていた・・・。 |
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3:始まり 「フワァー、・・・・やっぱもう少し寝ててもよかったんだよ・・・。」 アクビをしたイゼルが、寝癖がついた黄金の髪をそのままにして、またも、同じセリフを口にする。 「しかたないだろ、依頼人が開門前に来いと言ったんだ。」 そう答える、ボーントレットも眠そうに目をこする。 ここは、ソリテン王国の首都ラリィ、北門前広場。 普段は人々で賑わうこの広場も、太陽が昇ったばかりの開門前とあっては、その姿はまばらである。 今ここにいる人間といえば、出立を急ぐ旅商人や冒険者のみ・・・つまり、同業者だけだ。 しかし、その中にコーネルと名乗った依頼人の姿はまだない。 「ったく、あのオッサンもなんでこんな早くに・・・・ん?」 悪態をつきながら、広場を見まわすボーントの目に、ある光景が写る。 それは、門を警備している兵士と金属鎧を着た黒髪の若者が口論している姿だった。 この時間帯は、早く出発したい冒険者が、定時にならなければ開門しようとしない兵士に向かって、つっかかていく姿をよく見かけるのだが、今回はその例には当てはまりそうにない。 なぜなら、必死の形相で何かを懇願しているのは兵士の方だからだ。 「なかなか面白そうだ。」 相変わらずアクビをしているイゼルをその場に残し、ボーントは静かな足取りで2人に近づいていく。 「悪いな。だがもう決めた事だ。私は、ダナードへ行く。」 パイクは、苦笑いをうかべ答える。 「何故なのです!?今までの功績を考えれば、騎士の位を頂くまであと少しではありませんか。 私は将来、あなたにお仕えしようと心に決めているのです!!」 志願出撃で何度か行動を共にした兵士・・・クレイグといっただろうか・・・が門の警備をしていたので、騎士見習いを辞めた事を伝えるたらこの騒ぎである。 「私は、ここに居ても騎士にはなれないさ。だからこそ、この国を出る事にしたんだ。」 「しかし、今度の任務は・・・・・」 見習いに戻る気が無い事を、何度説明しただろうか。 それでもクレイグは、納得しない・・・いや、したくないと言った方が正確だろう。 「もういいだろう。だいいち今更、見習いには戻れない。お前も、俺なんかより将来のある奴を見つければいい。」 それまでより厳しい口調で、パイクは言う。 「・・・・分かりました。」 クレイグの返答は、うつむきながらの小さな声によるものだった。 だが、その一瞬後には覇気のある声で敬礼をする。 「それでは、旅の安全とこれからの御武運をお祈りしております!」 どうやら納得したわけでは無いようだが、説得するのは無理と分かったのだろう。 「ああ、お前もな。」 笑いながらパイクも敬礼し、詰所へと戻っていくクレイグを静かに見送る。 「・・・・なるほど、元騎士見習いって訳か。」 ボーントは小さく呟き、兵士の方を見続ける黒髪の騎士見習いに声をかける。 「あんた、大した騎士ぶりだったな。」 「いや、私は見習いだ。それも昨日までの事で、今は誰にも仕えていない。」 こちらに向き直りそう答える男は、こちらが近づいていた事に気付いていたようだ。 自分も金属鎧を着ているので、確かに足音もしていただろうが・・・。 「ああ、悪いが聞かせてもらった。俺は、ボーントレット。傭兵の間じゃ、ボーントで通ってる。」 「私は、パイク=サナレット。パイクでいい・・・それで何か用でもあるのか?」 パイクと名乗った、騎士見習いは警戒の眼差しを向けてくる。 まあ、話しを立ち聞きした初対面の傭兵に対しては当然の態度だろう。 「あんた、ダナードへ行くんだろ?何しに行くんだ?」 しかし、それに構わず、ボーントは話しを続ける。 「・・・答える必要があるのか?」 警戒の眼差しは、一層鋭さをます。 「そんなに怒らないでくれ。もう一度謝る。俺達もダナードへ行くんだ、だから・・・な。」 ボーントは、笑みを浮べるがパイクの目から視線を外さない。 「・・・トーナメントに参加する為・・・、聖騎士になる為にダナードへ行く。」 しばらく間をおいてそう答えた時、警戒の眼は決意の眼へと姿を変え、その眼光はさらに鋭さを増す。 ダナード王国の誇る”ダナード神聖騎士団”は、魔法を行使できる者しか入隊できず、剣の腕も並の騎士以上に要求される為、ガーネシアで最強の騎士団と噂される。 そして、トーナメントで国王や上級騎士達の目にとまった者は、地位・家系に関係無く騎士になれる。 もっとも、そのような人材は、年に1人2人といったところだが・・・。 「・・・なるほど・・・本気らしいな。って事はあんた、魔法も使えるって事か?」 今まで笑っていた傭兵の顔が、徐々に真剣になっていく。 「ああ、一応な。」 その真剣な表情に、かすかな興味を覚つつ答える。 「なら、一緒にダナードへ行かないか?俺達は、護衛の仕事でダナードへ行くんだが、俺もそこにいる相棒も魔法は全く使えんのだ。」 パイクは、相手の真意と実力を探る為に、もう一度ボーントを見なおす。 だがボーントの方も、警戒と値踏の視線を同時に浴びながら、堂々とこちらを見返してくる。 「ふっ・・・。ああ、分かった。 だが、依頼人や相棒の了解を取らなくてもいいのか?」 短く小さなため息をついたパイクが、逆に質問する。 始めて会った人間を、依頼主の許可も無しに”隊”に加えてもいいのか疑問に思ったのである。 「そりゃ、戦力が増えるんだから問題無いと思うが・・・、それよりこういう時は普通、「俺の取り分は、 いくらだ?」って聞くもんなんだが・・・騎士ってのは、本当に金には興味ないんだな。」 ボーントは、感心したように答える。 報酬交渉しないなど、傭兵稼業では考えられない事なのだ。 しかし、その話しを聞いたパイクもまた感心したように言う。 「ああそうか、なるほど。」 報酬交渉など、お使え稼業では考えられない事だったからだ。 「・・・・フッ、お互い勉強不足って事か。」 2人は、顔を見合わせ笑い始めた・・・。 |
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4:理由 ダナード王国北西部、首都ガネスへと通じる街道。 脇に停車している数台の馬車は、商隊のものらしくそのほとんどに荷物がうず高く積まれ、そうでない車からは、馬のそれよりも大きな寝息が聞こえてくる。 しかし、聞こえて来るのは寝息だけではない。どうやら、誰かが話し込んでいるようだ。 「・・・まあそんなとこだ。だが、あんたは、何故騎士なんか目指すんだ?」 マントをはおり大剣を抱えた金属鎧の男が、火に当たりながら隣りの男に尋ねる。 「何故? 男が騎士にあこがれるのが不思議なのか?」 抱える武器が戦斧なだけで、同じような姿の男が、逆に問い返す。 重装備の大男が、このような格好で話し込む姿は、あまりかっこの良いものではないが、火を起こしているのは、野生動物を遠ざける為だけではない。 秋も終わりに近づくこの時期ともなると、夜の見張りは火なしでは到底やっていられないのだ。 「いや、不思議じゃないさ。”ガキ”の頃には大抵の奴が憧れるだろうよ。だが、普通は諦めちまう。大抵の奴は家の跡を継ぐし、剣に生きたとしても傭兵か兵士がいいとこだ。それが・・・、普通だ。」 相手も自分も”普通”ではないのに、普通などという言葉を使うのもおかしな気がしたが、他に適当な 言葉が思いつかない。 「・・・・ふん、・・・・俺がガキの頃の話しだ・・・.。」 パイクは、何かを考えた後、少し長くなるがと話し始めた。 「俺の実家はソリテンでは、辺境なんて呼ばれるような田舎にあったが、土地は肥えてたんで農業をして暮らすには、何の問題も無かった・・・。だが、そこに妖魔どもが棲みついた。 大人達は、騎士や兵士達を送ってくれるよう頼む為、何度も首都へと足を運んだが、返事はもう少し待ての繰り返し。 そこで、村で傭兵を雇う事にした。傭兵達はゴブリンどもを倒し、村にも平和が・・・戻らなかった。 今度は、その傭兵どもが、村に”棲み付いた”のさ。」 パイクは、火に向けていた目をボーント向けるが、彼は続きを促すように頷くだけだ。 「奴等は、「これからも村を守ってやる」と言って、何ヶ月も村に居座り食料をむさぶり続け、反抗する者には容赦無く暴力を振るった。だが、ガキだった俺にも、乱暴された女性の事が耳に入るようになった頃、新しい化け物が現れた。 マンティコアだった・・・。 奴は人間の言葉を使ってこう言った。「自分が村の支配者であり、人間はただの家畜にすぎない」と。 奴が現れたとき、さすがに皆、傭兵達にすがった。だが、奴等は俺達をほおって逃げだした。 ・・・今、考えたら当然かもしれん。並の傭兵2.3人じゃ、あんな化け物にかなうはずがない。」 もう一度見返すパイクに、ボーントは、「ああ」とだけ答え押し黙る。 「結局、奴等は逃げるどころか全員食い殺され、そのおかげかどうかは分からないが、しばらくの間誰も襲われなった。 それでも村人全員が脅えきっていた、そんな時、1人の男が現れた。 白銀に輝く鎧を身にまとったその男は、マンティコアと1人で戦い・・・、そして打ち倒した。」 「マンティコアを一騎撃ちでだと!?本当ならその騎士、相当な腕前だな・・・。」 今まで、黙って聞いていたボーントが、突然そう口にする。 「ああ。実際には俺は、その戦いを見ちゃいないんだが・・・なんせガキだったから、親に家に閉じ込められててな。」 「なるほど、あんたの両親は、常識的な思考のようだ。」 笑いながら、ボーントは言う。 「まあな。だが、あの騎士が1人で倒したのはまず間違いない。 あの時、彼以外に怪我をした者はいないし、あんな化け物に向かっていくような奴は、村には1人もいなかった。まあ、当然といえば当然なんだが・・・・。」 「・・・悪い、話しの腰を折っちまったな・・・先を続けてくれ。」 「続きといっても話しは・・・そうだ、その騎士、礼をすると言った村人に、なんて言ったと思う?」 パイクは、今までとうって変わった楽しそうな表情で問いかける。 「さあな・・・キザなセリフでも吐いたのか?」 「ああ、彼はこう言ったのさ、 「私は、あなた方が畑を耕すように、自分の領民を守るという当然の仕事をしただけです。それどころか、助けに来るのがこんなにも遅れてしまった・・・大変申し訳ない。どうか私を許してほしい。」 ・・・だ。」 「・・・・・・お前、そんな正確に覚えてるって事は、そいつの事をカッコイイ!!・・・と・・・。」 呆れ顔でボーントが言う。 「まあ、彼に憧れて騎士になりたいと思ったのは確かさ。ガキの時には、物語の主人公のように見えたからな。・・・さすがに、白馬には乗ってなかったが。」 「”彼”の事を、”ガキの頃”にはね・・・。」 「そう言う、お前はなんで傭兵なんてやってんだよ!?実家、ガネスにあるんだろ?」 馬鹿にされたと、感じたのかパイクが強い口調で尋ねる。 「・・・もしかしたら、お前と同じかもしれない。」 「?」 「・・・俺の場合は、目の前にいた騎士がクズのような奴で、通りかかった傭兵がカッコ良かった・・・それだけの事だ。・・・まあ、他にも理由はあるがな。」 「なるほどな・・・。・・・俺もそう言えば良かったな・・・。」 「・・・なにがだ?」 物思いにふけるように考え始めたボーントが、ひどく怪訝な顔をする。 「いや、何でもない・・・それより、この商隊の連中やけに無愛想だと思わんか?俺達を厄介者扱いしているというか・・・まあ、コーネルさんはともかくとして。」 「傭兵の扱いなんてそんなもんだ。コーネルの旦那みたいに愛想が良い方が珍しい。だいたい、こんな美味しい仕事はそうはないぜ。 大抵が・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 月と星が見下ろし、炎が2人を照らしだす。 話しはまだまだつきないようだ。 そう、夜も旅も全てが始まったばかりだから。 |
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4:特務部隊 ダナード王国北西部とある街道。 |
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