ESCAPE 〜プロローグ〜
・・・ここはどこだ・・・。
気が付けば見たことも無い真っ暗な部屋
いや、牢獄の中に俺はいた・・・。
なぜこんな牢獄の中にいるのだろう・・・。
・・・少なくとも日常の中にいないという事だけは理解できた。
落ち着ける状況じゃないが落ち着いて思いだそう・・・。
俺の名前は・・・村井詠二・・・。
普通のどこにでもいる大学生だ。
いつもと同じ学校の帰り道で・・・
本屋で立ち読みして、コンビニで弁当を買って帰ろうとした時
突然、数人の男に囲まれて・・・。
そこからの記憶はない・・・。
奴らはいったい何者なのか・・・。
俺を襲いこんな所に入れるのに何の意味がある・・・。
思い当たること・・・・。
それすらない・・・。
真っ暗な牢獄の中を見ると俺以外にも同じ境遇の人間がいるようだ。
それも一人ではなく数人も・・・。
そう思った時。
「気がついたか・・・。普通なら驚いて騒ぐのだが・・・。」
声をかけてきたのは老人だった。
白髪で細身の落ち着いた感じの老人だ。
「あんたもついてないね・・・。若いというのに・・・。」
ついてない・・・。
まあ、普通見知らぬ人間に襲われて拉致されりゃついてないだろう。
だが、こんな牢獄に入れられているのだから・・・。
この程度ではすまないのだろうな・・・。
奴隷として海外にでも売られてしまうのか?
などと、考えていると・・・老人が口を開いた・・・。
「ワシらはエサにされるのじゃよ・・・。」
なんだって!? エサだと!?
俺はその老人に問いかけた。
「なぜ、そんなことを知っている。
俺のように襲われたようではないようだが・・・。」
老人は俺の問いに一瞬戸惑ったようだった。
だが、老人は再び口を開いた。
「ああ、ワシは最初からここにいる・・・。
この研究所の人間だったからな。
その実験の発案者だったからな。」
何!? 発案者だと・・・。
ならば、何故そのような男がこんな牢獄に入れられている?
俺がそう思った時、老人は語った・・・。
「ワシは間違っていたのかもしれん・・・。あんなバケモノを・・・。
すまん・・・。」
どういうことだ? バケモノだと?
それから老人は何も話さなかった・・・。
暗闇と状況が理解できない不安が俺を苦しめた・・・。
どれぐらいの時間が経ったのかそれさえもわからない。
もしかしたら数時間も経っていないのかもしれない。
しかし、俺にはとてつもなく長い時間に思えた・・・。
定期的に与えられる食事・・・。
それ以外には何も無かった・・・。
最初は食事の回数が時計代わりだった・・・。
しかし、もうそんなことはどうでもよくなった・・・。
永遠にここをでることは出来ないのだろう・・・。
そんな諦めが俺の心の中を埋め尽くしていった。
そんなある日・・・もちろん日という概念も無い状況だが・・・。
俺はその実験の恐怖を知った・・・。
いかにも悪人というような大男が数人やってきた。
そしてその中に一人いかにも研究者というような男がいた。
男が指差す牢獄の中にいる人間達を大男達は引きずり出した。
嫌がる者、無抵抗の者、反応はそれぞれだったが結果は同じだった。
その時、あの老人がその男にむかって
「キサマというやつは・・・それでも人間かっ!
こんなことを続けて何になる!」
そう言い放った老人に男は冷たい目をして
「アナタのような方が人間らしさを語るとは・・・。
何になる? 私は神になるのですよ・・・。
人間の限界を越え人間を越えた存在にね・・・。」
こいつ・・・狂ってやがる・・・。
睨み付ける俺の視線に気付いたのか男は語りだした。
「そうですね・・・。そろそろお見せしましょうか・・・。
私の実験の成果を・・・ね・・・。」
そう言うと大男の一人が牢獄から出された人間達の前に立った。
次の瞬間、俺は自分の目を疑った。
大男が見たことも無いバケモノに変身していく・・・。
人型だが肌はまるで爬虫類のような鱗に覆われていた・・・。
冗談だろ・・・。
俺以外にもコイツをはじめてみたやつらはみんな
信じられないといった表情だ・・・。
呆然としている俺達を見て嬉しそうに男は言った。
「さあ、エサの時間だ・・・。」
まさか、俺達はコイツのエサになるために生かされているというのか!?
そして悪魔の晩餐に俺達は付き合わされることになった・・・。
それから数日・・・食事もほとんど食べなかった・・・。
いや、食べることなど出来るわけがない。
今、どんなに生き延びたとしても結果は変わらない。
結局はあのバケモノどものエサになる・・・。
その決定された現実だけが俺の心を縛り付けた。
そして、時間は過ぎ・・・どれぐらい経ったのかはわからない・・・。
あの男がやってきた・・・。
俺は死を覚悟した・・・。
もう、生きていても怯えるだけの日々だ・・・。
ならば、生きる必要などない・・・。
だが、男の行動は俺の予想とは異なった・・・。
男が口を開いた・・・。
「もう実験はいいでしょう・・・アナタ達にも用はない。
だが、ここの事を話されるのも厄介だ・・・。
そこで・・・ゲームをしましょう。」
ゲーム・・・だと・・・・。
「そうです。ただし、コインはアナタ方の命ですがねぇ。
この研究所はもしもの時に備えて迷路になっているのですよ。
この迷路から出ることができればアナタ達は自由になれます。
出ることができれば・・・ですけど・・・ね。」
要は逃げるチャンスをやるから勝手にしなってか・・・。
「ですが・・・私のバイオデーモンもいることをお忘れなく・・・。
では、生きて出ることができたらお会いしましょう・・・。」
そう言うと牢獄の扉を開けて男と大男は去っていった。
オマエなんかに会いたくない・・・。
俺はそう思った・・・。
バイオデーモン・・・あのバケモノどもか・・・。
あいつらに見つからずに外に出ればいいのか・・・。
やるしかないようだな・・・。
そう思っていると老人が
「行くのか、行くと言うなら止めはせんが
生きて出られる確率は0に等しいぞ・・・。
じゃが、アンタなら出られるかもないな・・・持っていきなさい。」
そう言うと老人は見たことも無い機械を渡した。
「それはこの迷路の中でも方位をあらわすコンパスじゃよ。
この中では普通のコンパスは使えないからな。
ワシはここに残ろうと思う・・・。」
そうか・・・。俺は老人に礼をいい迷路へと進んでいった。
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