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研究室

 研究室はMedical Research Center (MRCと略す)の4階にあり、おそらくここは大学の中でも最も年期のある建物の中の一つといえる。近いうちに新しく建設されているCancer Research Centerに移る予定も、当初の6月移動予定が10月、そして更に来年1月と延びまだ確定していない。更に延期される可能性もあり、「だれもその確かな日付けを知らない」というのがおそらく最も確かな事実といえそうだ。現在の研究棟では培養実験室や薬品室などが別になっており重いドア−をいちいち開けないと入れないのが 面倒である。
 またflow cytometerのFACS、 immunohistochemistryの顕微鏡、filmの現像等
の多くの実験を、隣のEMRB という建物までいってやらねばならず、忙しい時は両建物のあいだを往復しまく ることになる

Labo desk
小生のラボデスク
                                                                

ラボメンバー


 我ラボは ボスのMichael A. O'Donnell (通称マイク, 44才)が臨床の仕事で滅多に顔を出さないため、ボストンの時以来ののメンバーである中国人夫婦と、新しく加わった小生の3人が実働部隊である(2001年11月よりResearch AssistantのDavidと韓国からの招待研究者Jamesが参加した!)。中国人の亭主のYi(45才) は典型的なA型人間であるため技術はしっかりしていてこまめであるが、奥さんのHong(45才)は典型的なO型人間で大雑把で口がうまく、またさぼるのも上手である。終日パソコンのゲームと知り合いへの電話攻撃であけくれ、ボスが学会や手術に入っている時は当然のごとくラボに出てこない。そのくせボスに頼まれたことはちゃんと報告するのが長い間の謎であったが、実は亭主の Yiが代わりに実験をしていることに数ヵ月程して気がついた。仕事のactivity に反し、ラボの中ではおばさんが主導権を握り、meetingの時には実験以外のどうでもいい日常的な会話に大いに花をさかせ、全くついていけない小生は、苦笑して黙っているしかないことしばしばである。その下らない話をまともに相手にするマイクもなんと懐が深いのかと感心もしたことがあるが、今ではどうでもよい会話を長々と最初にするアメリカ式会話法にも慣れ、必要かつ最小限に話をまとめるのをやめ(我々外国人はボキャブラリー不足から往々にしてもそういう会話調になる傾向になりがちであるが)、回りくどい会話に小生も時々参加するようになった。考えるに、アジア人的上司みたいに「早速だが、例の結果は?」などとせっついてこないで、 悠然と構えて部下が報告するまで待つのが彼等アメリカ人の特徴でもあるようだ。うちのマイクしかりである。

 近いうちに移動するCancer Research Centerでは、合同カンファをしている他の三つ泌尿器科研究ラボ(Dr. Lubaroff、Dr.Griffthと Dr.Ratliff team)と合体するので総勢は20名ほどになる予定。

gaikei Cancer center
研究室から見る外の風景
建設中のCancer Research Center

                                    

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ラボの研究内容

 我ボスのマイクはアメリカ国内で最も膀胱癌とBCGの膀胱内注入療法において有名なUrologistの一人である。特にBCGからサイトカインを分泌させる組み換えワクチンにおいては世界の第一人者である。小生もマイクの論文は大学院時代に随分参考にしていたし、いずれ会って話をしてみたいとも思っていた。従い、ラボの研究テーマは当然BCGとBladder Cancerとなっている。
 あいにく、小生はBCG関連の研究は全くしておらず、Bladder Cancerとchemokineとの関係を独自に開始した。内容はcancer biology とImmunologyである。その理由は?一旦BCGから離れて異なることをして自分の研究分野の幅を持ちたかったこと、最初にBCGからみの研究をやっていたが差して驚くような結果が出なかったこと、前ラボの独断ボスのようにサイエンティストを自分の思考内から出ることを許さないことに対する反発?等が主な理由であると言いたい。が、これらは取ってつけただけで、本当はマイクの懐の深さと寛大さ、そして小生を拾ってくれたマイクになんとしてでも恩返しをという感謝の心が、「とにかくpositiveがでたところで勝負」という意気込みを小生に生ませ、気が付くと今の道にドンドン付き進んでいった、というのがまぎれもない真実である。その結果、BCGとは何の関わりも無いことをやっていることになったというわけである。
 そういうわけで、実験計画から材料まですべて自分で考えて始めていった。日本では準備されたものをただ使うだけだった小生がアメリカにきてすべて自分で一から十まで立ち上げ整備しなくてはならなくなった。最初は大層苦労したが、これは逆に今までスキップしていたものを、もう一度基本からおさらいするという点において非常に良い勉強になったと思っている。そういう一つ一つの基礎確認などをすることが実験に取り組む姿勢から、結果的にほどよく小生に潜んでいた<甘さ>を取り除いていったことになった。また、そういう脇を固めた実験をしていくと仮に実験を失敗してもその原因に関しては、もう一度原点に戻れるため、失敗からの立ち直り時間、いわゆる律速段階を短縮していることにもなった。 こういう感覚はきっとどの世界でも共通していえることであろう。
 実験内容に戻る。chemokine とbladder cancerの領域は当時も今もほとんど手がついておらず、マイクからも好きなようにやってみろ、と言われたので思いつくことは片っ端からやらせてもらうことが出来た。これは実にラッキーだった。そのためわずか数ヵ月の間に、興味深い結果が次ぎ次ぎと見つかり、現在は大きく二点に絞って研究を行っている。内容はさらにdeepに、現象からそのメカニズムの解明へと進んでいる。その他、chemokine実験の際偶然見つけたbladder cancer のFas によるapoptosisメカニズムに絡んだ実験をトム(下記に記す)と組んで行っている。いずれ追って本ホームページにて公開したいと思う。


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他の泌尿器科ラボの研究テーマ


 泌尿器科基礎研究の世界では高名な学者がこの泌尿器科に二人おられる。 一人はDr. David Lubaroff 。もうアイオワで28年もprofessorをやっていてprostate cancerの研究においては一時代を築いた人であるそうだ。またprostate cancerに関しては多くの雑誌でレフェリーをやっている。研究内容は動物実験における遺伝子導入によるprostate cancerの治療。つまり遺伝子治療。具体的にはCpG モチーフ治療、あるいはPSA発現治療などである。現在62才、定年までもう少しではあるがまだまだ若い人を引き連れてがんばっている。アメリカ人はファーストネームで彼をデービッドと呼ぶが、小生はいまだに「ドクター、ルバロフ」と呼んでしまう。
 もう一人はDr. Timothy Ratliff (愛称ティム、推定50才強)。この人も元はWashington Univ. (St.Louis) の時代、BCGで数多くの有名な論文を出した学者であるが、アイオワに移ってからはprostate cancerの遺伝子治療に最大のエネルギーを注いでいる。この人のラボが一番大きくラボメンバーは常に10人以上をかかえている。アイオワに移ってきてまだ5年ほどのため発展途上段階。予算もそこそこ持っているようで、頼めばポスドクでの留学のチャンスを与えてくれるかもしれない。
 数ヵ月ほど前にAssistant proffsor になったトムことTomath GriffithはWasington Univ. 時代からティムの知り合いだったらしく、一度企業に就職したトムをティムが口説きアイオワに連れてきたということである(本人の談)。若干33才にも関わらずScience, JEM, Immunityなどの蒼々たる論文を多く書いている。数多くの論文をもつが、よく調べてみるとJ.Immunology以下の雑誌には出さないようである。専門はapoptosis とTRAIL。特にTRAILの第一人者の一人である。現在postdoctoral fellowを募集中である。決して多くを語らないが、無口ではなく、小生が親しくしている友人の一人でもあり、またapoptosisにおける小生の実験(第三の実験)の共同研究者の一人でもある。
 いずれの三人も、教授だからといって自分以下を威圧したりせず(トムは年下であるが)、フランクに接してくれる。何度も渡米前からそういう話は聞いてはいたが、やはりアメリカの寛大さと大らかさにじかに接すると本当に「日本ではなくアメリカにいるのだ」と思うことがしばしばある。
                                                                                    

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