僕の前に現われた宇宙人 〜夏休みの読書感想文を書くヒントとして〜 [04.08.29]
僕は小学校の5年生。夏休みに入って、いろいろな宿題をしなくちゃいけない。調べ物をするのに、 何といっても、インターネットを使うのはとても便利だ。でも、クラスメートは、パソコン使える人 ばかりじゃないから、ちょっとずるをしてる気もするけどね。
そうやって、調べものをしている途中で、チャットという場所に行き着いたんだ。なんか、チャットって エッチな場所だと思ってた。だって、先生やPC使える大人も、危ないところには行かないようにって言ってたし、 その中にはチャットっていうのもあったんだ。
でもさ、駄目って言われたら、余計に興味がわくじゃない。いけないことしてみたいし。それで、たまたま見つけた チャットに参加してみたんだ。
そうしたら、別にエッチでもなんでもない、普通の会話をするところだった。ちょっと残念だったけど、でも、 いろいろな年齢の人と話が出来て、とても楽しかったんだよ。
楽しい会話をしているうちにね、とっても素敵な人に出会ったんだ。中学生のお姉さんだったけど、とっても優しくて お話している感じでは、ちょっと可愛いというか、素敵なお姉さんなのかなぁって想像したりして。なんか憧れちゃった。
いろいろな話してて、年上の人だけど、なんか友達になってくれないかなって、そう思ったんだけど、 初めてのチャットで、どうしたら仲良くなれるのかも分からないまま、もう、チャットも終わらなきゃって 時間になっちゃった。
これっきりになるのかなって思ったら、そのお姉さん、アイって言うんだけど、突然、メールアドレス 教えてって言われたんだ。びっくりしちゃった。だって、これまで、メールアドレス教えるなんて、 仲のいい友達だけだったからね。会ったこともない人に教えていいのかなって、ドキドキしながら、教えちゃった。
正直ちょっと怖かったよ。だってネットには悪い人がたくさんいるって聞いてたから。でも、楽しみだったんだ。 だって、年上だけど、女の子からメールアドレス聞いてきたんだもの。きっと僕を好きになっちゃったんだ、って思ったよ。 どんなラブレターが来るんだろうかって、楽しみにしてた。
そうしたらね、本当にメールが来たんだ。でも、ラブレターじゃなかったけど。
チャットで、僕が宿題で読書感想文を書かなければならないのに、読みたい本が見つからないって言ってたから、 アイちゃんが、だったら、この本読んでみてって教えてくれたんだ。
教えてくれた本は「アミ小さな宇宙人」って本だった。その続きが2冊あって合計3冊なんだよ。
でもさ、素敵なお姉さんから薦められた本、僕のこと好きなんだろう女の子が薦めてくれた本なんだよ、 読まなきゃ、男として恥かしいよね。そう思って、三冊とも、図書館に行って借りてきたんだ。そしたら 夢中になって一気に3冊、読み切っちゃったんだ。
凄いでしょ、3冊の本を一気に読むなんて。えらいでしょ。
主人公は10歳の少年、ということは、僕と同じような歳の子だよね。その前に現われた宇宙人のアミは、 主人公のペドロ(ペドゥリート)を宇宙船に乗せて、より進んだ星に連れて行ってくれる。そして、宇宙には、 地球より進んだ星があって、地球はこの、先、生き残れるかどうか、危うい所にいるってことを教えてくれるんだ。
地球の科学技術はある程度進歩しているけど、その技術が誤った方向に使われたとき、地球は滅亡の道をたどる のだということを伝えて、生き残る方法は、愛で地球を満たすことだって。
そうだよね、地球で生きている人にとっては、戦争よりは、まず、とりあえず、今日を生きることで精一杯な人も たくさんいて、そういう人たちにとって、戦争よりも飯をくれって感じだもんね。そんな人たちの生活を考えずに、 戦争をして得をする人たちが戦争をやろうと思うんだから。ほとんどの人は、そんな相手でさえ、出来れば戦争する ことよりは、仲良く平和的な付き合いが出来るようになった方がいいはずだもの。
そのために、愛に満たされた複数の星から構成された宇宙人の社会は、地球のような未熟な星を助けるために、 影でいろいろ援助してくれているんだって。でも、最後にその星の運命を決めるのは、その星に住む僕たち次第なんだって。
なんだか、ちょっと怖くなっちゃった。地球は救われるのかな、それとも、滅亡してしまうのかな。自分が頑張らな きゃ、いけないのかな。でも僕になにが出来るだろう。
そんなことを思いながら、読み終わったんだ。宿題の読書感想文なんて、楽勝で書けたよ。
で、ふと気がついたんだ。この本を薦めてくれた女の子、チャットではアイって名乗ってたけど、メールでは、 相田まなみって言う名前だったんだ。チャットでの名前とメールでの名前と本名は違っていても不思議じゃないらしいん だけど、でも、僕は気がついたの。メールの名前の秘密に。
アイダマナミ はじめの二文字で、「アイ」ってチャットで名乗っていて、それは不思議なことじゃないんだと思うんだけど、最初の一文字と最後の一文字を抜き出したら、アミになるんだよね。
そうなんだ、僕の前に現われたのは、紛れもなく、小さな宇宙人「アミ」だったんだ。僕は、 彼女がビンカ(主人公の恋人)だったらなぁって思っていたのにね。もちろん、僕が主人公のペドロ だったとして、だけどね。
その後も、なんどか アイちゃんとはチャットで会ってる。相変わらず自分が宇宙人だってことは 秘密にしているみたいなんだけど、僕には、もう分かってるんだ、君が宇宙人だってこと。 だからお願い、アミ、はやく僕にも双子の魂を紹介してよ、お願いだからさ。だって、夢で見たんだもの。 僕の双子の魂、恋人の存在を。それってアミの仕業だよね。
アイと名乗った小さな宇宙人アミは、今では、あまりにも有名になりすぎたみたいで、 忙しすぎて、本で書いていたような、小説の主人公を円盤に乗せてくれるように僕を円盤に乗せてくれることはなかったけれど、 円盤に乗った気分を本を読むことで味あわせてくれたんだ。それって、円盤に乗ったのと同じことだよね。そう信じてるんだ、素直に。
こんな話、大人の人には内緒だよ。だって、この話は本当だよって、大人に言っちゃうと、 嘘つきだって言われるか、頭がおかしいって医者に連れて行かれるか、してしまうからね。
アイがこの本のこと教えてくれた理由のもう一つは、きっと僕が、この本を好きになって、 友達にも絶対、この本を読んでほしいって薦めるだろうことが分かってたからなんだと思うよ。
僕には、この本の面白さを、他の人に薦められるほど、うまく、言えるかどうか、 自信ないけどね。でも、こうやって、ここに書いてるってことで、少しでもその興奮ぶりが、 伝わったら、嬉しいな。
そして、ここまで、僕の書いたことを読んでくれた人達で、まだ読んでいない人は、子供ではなくてもいい、子供の心を忘れていない、いろんな年齢、性別、国籍の人達に、出来たら読んで欲しい、この本を。そして、もし良かったら、感想が聞きたいな。よろしくね。
地球人の持っている科学技術が、本当に地球の発展に役立っているのか、地球を滅ぼしてしまうものなかは、今の僕には分からない。でも、滅ぼさないために僕や君が出来ることって、なんだろう。大人たち(君のお父さんやお母さん)は、どう思っているのだろうか。
まさか、何もしなくても、地球が滅びないと、根拠もなく信じているわけじゃないよね。
この文章は、徳間書店刊、エンリケ・バリオス著「アミ小さな宇宙人」 「もどってきたアミ」「アミ3度目の約束」の3部作を読んだ感想と、これらの著作に関わった人へ感謝の 気持ちを私流に表したものです。とりわけ、原作者、訳者、出版社、挿絵家には言うまでもなく、この本の 存在を教えてくれて、読むことを薦めてくれた『あなた』に感謝の念で一杯です。ありがとう。