入院生活の平凡な日常 [04.05.16]


 入院生活なんて、何もやることがなくて本当に、退屈でしょうがない。
 何しろ、自分がしなければならないことは、ほとんどない。医者や看護師さんにしていただく側である。

 正式な起床時間は、最後まで分からずじまいだった。特に起床の合図なんてなかったから。おおむね6時半頃に看護師さんが巡回に来て、体温や血圧、血中酸素濃度をチェックしていく。その時間までに起きていればいいようだった。まれに、6時少し過ぎたくらいの時間に来ることもあたから、正式な起床時間は6時だったのかもしれない。

 歯磨きや洗顔は、たいてい6時過ぎに済ませていた。就寝時間が早すぎたため、必然的に早起きになってしまったからだ。先に身づくろいを済ませてから、看護師さんが来るのを待っていたような次第。もっとも、髭剃りだけは、もう少し遅い時間にしていたけれど。
 検査のための採血のときだけは5時半に、一度起きなければならない。おそらく、看護士さんにとって、その時間が一番、他の業務に支障のない時間帯だったからだろう。とはいえ、そういう採血は滅多になかったので、普通は6時半に目覚めていれば、問題はなかった。まぁ、寝てたとしても、起こしてくれる。

 次の行事は、朝食である。時間的には7時半ごろが目安である。もちろん、5分や10分程度時間がずれることはあるのだが、それが(体調が最悪期を脱して以降は)結構不満だった。私ひとりの感想ではない。他の患者さんも、5分程度の遅れで
「どうしたんだ。遅いなぁ」
といらいらしている様子がありありと伺えた。私もまだかなぁ、なんて思ったりした。これは、朝食に限らず、昼食や夕食にもあったことだ。それほど待ち続けた食事の時間も、本当にあっという間に食べ終えてしまって、少し悲しかったりした。

 朝食後の薬は、事前に渡されているので、食後に勝手に飲んでいた。ただ、患者さんの中には、確実に薬を飲んでもらえるように、毎回毎回、飲む時間のたびに、看護婦さんなり看護助手の方が、飲む分だけ届けていて、目の前で飲ませていたようだけれども。私の場合は、投薬管理が自分で出来ると判断されたのあろう。


 ここからは、少し暇になる。主治医が、この後、一回は、朝の挨拶に来る。だが、この段階では、声をかけるだけで、診察行為は行わない。時間的には8時台。診察に来るのは9時台である。診察といっても、聴診器を胸に当てることと、お腹まわりを手で押すくらいのこと。元々、聴診器で、胸の音を聞いても肺炎なんて見つけられなかったくせに、と思わないでもなかったが、一日一回は診察しなければならないという規則があったようで、形だけのことだったのあろうと思う。というのも、医者が、朝に顔を出して挨拶だけはしてくれて、特に聴診器等を使うこともなく、調子はどうですかって問診だけで終わって、それで診察は済んだと思っていたら、夜も就寝時間間際になって、慌てて
「いやぁ、何度か来たんだけど、すれ違いだったみたいでね。まだ、診察はしてなかったよね」
そういって、聴診器で呼吸音を聴くことと、お腹を押さえることだけは忘れなかった。その日は、他の患者さんとも、なかなかタイミングが合わなかったようで、同じ病室の他の患者さんにも
「今日は、皆に振られちゃってさ」
なんて言い訳してました。
 そういう例外を除けば、医者の朝の挨拶と診察は基本的に午前中に終わってしまいます。

 次にくるのは、点滴です。抗生物質を(当初は2種類、その後1種類)打たれます。2種類のときは、約1時間、1種類では30分かかるのですが、それが10時から11時ごろだったと思います。2種類で、1時間かかるときには、結構早めに着てくれた様に思いますが、1種類になってからは、結構遅かったような。要は11時半までに終わるような時間にはじめたのかなぁ。

 午前の点滴が終わるとすぐに、喉の薬を持ってきてくれました。液体の薬を機械で気体化させて吸引するわけですが、これが約5分程度でした。

 これが、午前中の私の受ける治療でした。微妙に時間が空いているんですよね。しかも、私自身は、行動に関しては、特に規制がなかったので、いろいろ動きたい反面、最初の頃は、いつ、受けなければいけない治療の時間が来るのかが読めなくて、あまりベッドから離れないようにしていました。

 午後は、もっと時間がルーズになってしまうものです。というのも、午前中に外来診察を受けた方で、急遽入院される場合もあるし、入院患者で、通常とは違う処置を受けなきゃいけない人もいますし。そもそも、看護師さんにも昼休みはあるわけです。

 そんな訳で、午後は1時半〜2時頃からスタートします。まずは朝一と同じく、検温等で病室周り。その後、吸入の薬。
そこで一段落します。次の用事は、4時〜5時頃の点滴。
 それが終わると、もうまもなく、夕食の時間がきます。6時前後ですね。食べ終わると、後は就寝時間に向けたカウントダウンが始まります。
 7時〜8時頃に、再び吸入の薬があって、8時半頃に、就寝前の検温等の看護師さんのチェックがある訳です。就寝時間は9時ということになっていますが、まぁ、若干の余裕はあるし、眠れなければTV観ててもいいよとも言われていましたが、やはり共同生活ですから、手元の明かりやTVは消して、でも、とても寝付ける時間ではないので、しばらくラジオを聴いてから就寝しました。

 こういう風に書き出すと、いろいろありそうに見えるかもしませんが、時間的には詰まったスケジュールではないわけで、暇つぶしにTVを見たり、ラジオを聴いたりしていました。
 TVは各ベッドにプリペイドカード式のものが備付けられていて、1枚千円のカードを、自販機で買ってくることになる。1分10円らしい。そんな訳で、結構残り度数を気にしながら見ているので、番組を慎重に選んだり、トイレに立つ時などはちゃんと電源切ってみたり、普段ならしないようなこまめな電源のオン・オフをしてましたね。
 せこいみたいだけど、この時点で気にしていたのは 入院費がどれくらいかかるか分からないってこと。その代わりに持ち込んだ(正確には母親に差し入れてもらった実家に合った、余分なラジオを活用していた。FM放送は電波の入りがあまりよくなかったので、もっぱらAM放送を聴いてました。特に、就寝時間後に聴くラジオ番組は受験生時代を思い出させるような感じがあって懐かしかった。


 普段の生活が、ややルーズだっただけに、入院して、決められたリズムの中で生活するということは、久しぶりのことだった。
ある部分では病院という世界の中での規制があったからこそ、だが。でも、その気になれば、きちんとした生活がおくれるんだなぁと再確認した次第。後は退院しても、その生活リズムを守れるだけの意志の強さがあるかどうかだ。
 病院では、他の人の目もあるからね。でも、自宅に戻れば、自分勝手の気ままな生活に戻ってしまうんだろうな。そこが一人暮らしの悲しさだ。

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