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1B(バーツ)=3円位

2003年12月 No.5

6時半まであと4時間半もある。

カメラ事件の後で寝れない。
隣に日本でいえばドライブインみたいな24時間やっているレストランがあるが食欲がない。

しかたなくドアの外の外灯の下で本を読む事にするが気分の落ち込みが激しい。

バスに迎えにきた男の子が近寄ってくる。
自分は中国生まれでいつか日本に行きたいと一人で喋りまくる。
酔っ払っているみたいな感じがした。

彼がいなくなってから暫くすると外のレストランの席に着いていた三人組のひとり、きれいなタイの女性がやってきた。化粧が濃い。一緒に飲まないかと言う。とても飲める気分ではなかったので断ったが、暫くすると今度は小太りの男性がまた誘いに来た。短く刈り込んだ髪で男性の格好ではあるが仕草がおかまさんぽい。何度も誘われたので行くことにする。そのかわりお酒は絶対に飲まないぞと心に誓って。もう一人の女の子は普通のいなかのお手伝いさんみたいな感じだったのでなんだかわからないがほっとする。しかしみんな英語がほとんど出来なかった。必死で本の中からタイ語を探しお決まりの何の目的でタイに来たのかとか日本の事等、チンプンカンプンの会話が続く。最後にはタイ語と日本語では辞書でこう書いてあるよなんていう話題になると、おもしろくなさそうな顔を見せた厚化粧の女性。そういう時の顔は男性の顔に見えた。きっと彼女もおかまさんだ。

その内その女性が、
「小太りのこの男があなたを愛していると言っているわよ」
と囁く。
小太りの男性はトロ〜ンとした目で私を見つめだした。やばい。
「もう寝ます」と言って席を立った。

考えてみれば今、午前3時。この時間にがんがんお酒を飲んでいるのだから一般の職業ではないのは確かだ。4時頃トイレに行った時にもまだ別の席で彼らは飲んでいたっけ。女性トイレに入っていると隣に入ってきた人がすごい勢いで出しているのがわかる。出ると洗面所で2人の人がお化粧直しをしている。またしてもおかまさんだ。おかまさんは女性トイレに入るんだ。

少し横になろうとオフィースの中に入る。
するとバスに迎えに来た彼が隅っこのゴザの上で寝ていた。

6時に彼の目覚まし時計が鳴る。
私は横になっていただけで一睡もしていない。

彼は昨日と変わって私の事など一度も会っていないとでもいう感じでなんの挨拶もしてくれない。変なの。

まだ暗かったけれど外に出ているとどこからか外人さんもバスを待っていた。ほっとする。

やっとバスが来た。あ〜長い夜だった。

バスはあの魔のVIPバスとは違って普通のおんぼろバスだった。

15分位でもうボート乗り場に着いた。

ボートに乗る時、チケットを切っているのは、あの迎えにきた彼だったがまたも無視された。

先頭のデッキに陣取れば180度の景色を見られるから、みんなそちらに行こうとする。

太陽がもろに当たり隠れる所もないのに外人さんはそういう所が好きだ。

私は後ろのデッキの荷物が置かれている付近にした。

おだやかな入り江の周りに漁船や村の生活が垣間見れる。

朝の風を感じる。 明るくなっていく。 気持ちがいい。

暫くするとボートの速度が速くなりだした。

波が荒くなり揺れる。波しぶきが凄い。

タオ島に着くスピードボード。
港での写真は別の日に撮った。

一人、二人とデッキにいた人が船内に入って行く。このボートはスピードボードというのを忘れていた。

ボートでタオ島のガイドブック (このガイドブックは後でなかなか重宝するので必ず貰いましょう) を見ていたが、だんだん気持ちが悪くなりだした。景色どころではない。

船内に下りてみるとほとんどの人が椅子を何個も占領して横になっている。みんなも酔っているんだ。

風に当たっているのと、横になるのではどちらが気持ち悪さを軽減できるのだろう。

結局、デッキでしゃがんでいる事もできなくなり船内で横になった。

しかしお酒を飲まなくてよかった。私のことだから、もしカメラ事件がなければあのおかまさん達と一緒に朝まで飲んで、このスピードボードの中で何度も吐いていただろう。

タオ島に着いた。

もう立つ事もできないと思ったが最後の力を振り絞った。

バックパックにガラガラと運べるスーツケース。家族連れやカップルはスーツケースや手荷物を持って男性がそういう荷物を運んでいるけれど、女が一人でこんな大荷物を持って島に行く人はいない。船から岸に渡る時このスーツケースを運ぶのが大変。階段、梯子、隙間だらけの桟橋、海岸、舗装のされていない道路と泣きたくなる。

ボートの到着に合わせて乗り合いタクシー(ソンテウ)が待っている。

どこのビーチに行くかと聞かれサイ・リービーチだと言う。

タオ島の情報では、西側のサイ・リービーチが遠浅でバンガローが多く交通の便も良いので人気があると書いてあった。

「ここで待っててくれ」と言われる。

他の人達が集まるのを待つのだ。

向こうの方で満員のソンテウが走り出す。

一台・・・ 二台・・・ 三台・・・

周りを見渡と、なんと私ひとりだ。

「オーイ。 みんなどこへ行ちゃったの」

と心の中で叫ぶ。

つづく

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