構音障害と失語症

神経内科学P102

ベッドサイドの神経の診かたP243

言語障害の種類

後述

構音障害(dysarthria,anarthria)

失語症(aphasia,dysphasia)

 

無言症·············· 意識は清明(明瞭)だが、全く話さない。構音障害や失語症はない。

                          ヒステリー患者にみられる。

無動性無言症···· 開眼しているが、無言で、随意運動もしない。

                          網様体賦活系の部分障害により起きる。

同語反復··········· 同じ言葉を繰り返す。

                          【例】「先生、帰りたい。帰りたい。帰りたい」

言語間代症······· 言葉の末節だけを繰り返す。

                          【例】「東京駅、駅、駅」進行性麻痺1)・アルツハイマー病で起きる。

 

1)進行性麻痺

「臨床神経内科学」平山 惠造 編(南山堂)P262

神経梅毒の一種。

神経梅毒:梅毒スピロヘータによる中枢神経系への感染症である。

     @初感染後、3~18ヶ月以内にスピロヘータが中枢神経内に侵入。

     A髄膜が侵される。

     B始めの数年間→無症候性髄膜炎

     C脳・脊髄・血管系など傷害は多岐に及び、症状も多彩である。

 スピロヘータが大脳皮質(特に前頭葉と側頭葉)を侵し、髄膜肥厚・脳萎縮・脳室拡大などが起きる。潜伏期は、10~20年に及び、40~60代の男性に多く発症する。

 初期:人格変化と精神機能低下

    →知能低下・記銘力低下・判断力低下・誇大妄想・錯乱状態・幻覚・言語障害など

 末期:痴呆・てんかん発作・脳卒中様発作など

構音障害と失語症の違い

 ヒトの話す過程

  @視覚・聴覚

  Aウェルニッケ中枢

  Bブローカ中枢

  C運動野

  D顔面神経・舌咽神経・迷走神経・舌下神経

  E筋

 

 失語症は、@〜Cの障害

 構音障害は、D〜Eの障害

失語症に関連する脳のしくみ

言語の発声のしくみ

ウエルニッケ中枢(Brodmann2239野)で、聴覚視覚で受けた情報の意味を理解し、弓状束によってブローカ中枢(Brodmann4445野)に投射される。

ブローカ中枢はウエルニッケ中枢からの情報より言語パターンを形成して運動中枢に送り、言語が発声される。

角回は読み書きに関係する部位である。ここが障害されると失読症になる。

    →文字は見えても、読めなくその内容が理解できない

 

 前言語野:ブローカ野を中心とする領域

 後言語野:ウェルニッケ野・縁上回・角回などを含む領域

 

 

 

 

 

 

 

構音障害=構音器官の障害

「意図した音がうまく生成されない状態」

  →・発語に関係する神経や筋肉の障害で起こり、うまくしゃべれない。

   ・言葉の理解も正常で、言うことも、考えていることも正常であるが、思うように発語できない。

書字読書に関しては異常がない。

 

 比較的認められる症状

  @呼吸発声機能の障害           呼気の調節・発声の持続・声の大きさ、高さや質

A構音共鳴機能の障害           子音・母音の構音障害・開鼻声の有無と程度

B韻律の障害················ 発話速度・抑揚・アクセント

C嗄声(させい)········· 喉頭麻痺の可能性あり

 

構音障害の分類・原因・病変部位

球麻痺··········· 位運動ニューロンの障害。舌咽迷走舌下神経の障害。1)

       弛緩性構音障害:筋力低下による

仮性球麻痺···· 位運動ニューロンの障害。延髄より高位の皮質延髄路の障害。

       性構音障害:相動性伸長反射の亢進

錐体外路系···· パーキンソン病では、筋固縮による運動範囲の縮小・速度低下で、運動低下

の構音障害

舞踏病2)······ 異常な不随意運動を特徴とする、運動過多性の構音障害。

小脳·············· 協調性運動障害を特徴とする、失調性構音障害。発音不明瞭な運動失調性発

                      語を断綴(だんてつ)性発語という。

 

1)顔面神経核は橋に存在するので、球麻痺は起こらない事に注意

 

2)舞踏病(chorea)

  錐体外路性不随意運動のうち、舞踏病運動を特徴とする病態の総称である。舞踏病運動は、チックの際の動きより遅く、アテトーシス運動よりは速い。

ジストニーやヘミバリスムのように単純な捻転運動のみでもない。舞うがごとく、複雑な屈曲伸展を含んだ運動である。顔面・舌・頚部・上肢・指・下肢などに現れる。大脳基底核の病変と関係していることが多い。

チック

顔面・頚部・舌・四肢などの筋肉に、不随意な速い収縮が瞬間的に起こり、しかもそれが不規則な間隔で反復する現象である。

アテトーシス

ある姿勢を維持したり、運動を行おうとする時に現れる不随意運動。顔面・手・指などに認められることが多く、一般に不規則なゆっくりとした動きで、精神的緊張、疲労時などに増悪する。

ジストニー

不随意運動の一つであり、四肢・体幹をゆっくりねじり、あるいはねじった姿勢を一定時間保つ。

ヘミバリスム

四肢の近位筋や体幹筋の収縮により、上下肢の大関節を中心に、投げ出すような回転するような激しい動きを示す不随意運動である。多くの場合、片側の上下肢に生ずることからヘミバリズムと呼ばれる。

失語症とは

大脳が損傷されたことによって生じる言語後天的喪失・障害」

 →ここで言う言語とは、@言葉を話す      (話す)

            A言葉を聞いて理解する (聞く)

            B文字を読んで理解する (読む)

            C文字を書く      (書く)

  などの活動を指している。

失語症とはこれら言語の諸側面の1つ以上が障害されている。

失語症の診かたは、言語の4つの側面を検査するのであるが、

実際にはこれら4つ以外にもD、E書き取り、F復唱も検査される。したがって7つの側面から検査されることになる。  

これら7つの側面のうちどれが障害され、どれが障害されていないかというパターンから失語症の分類がなされる。

失語症検査前の注意事項

1、利き手

 

 右利き:95%の人の言語中枢は左半球にある。

 左利き:7080%の人の言語中枢は左半球にある。

 

2、教育程度

 

 言語了解・書字・読字の能力が異なる。

 

3、意識は清明であるか?

 

4、視力聴力に障害があると、失語症の詳細な検査は困難である。

 

5、精神薄弱者の失語症の検査は無意味である。

失語症の分類

話し方による分類

 

 1、発語の

 2、発語に努力を要するか?

3、韻律(はやさ・リズム・抑揚)

4、統語:正しい文章になっているか?

5、錯語があるかどうか?

6、言語促迫:多弁で止まらない状態

 

非流暢性 : @話しぶりに停止努力探索が見られる 

        A自発話の減少、速度の低下が見られる

 

流暢性  : @自発話は減少せず、速度も普通

        A錯語が多く、しかも正答より長くなる傾向がある

 

錯語   : @字性錯語;1つの文字の読みが間違っている

         (音韻性錯語)例)タバコを「タビコ」、時計を「タケイ」etc

        A語性錯語;単語全体の読みが誤っている

              例)タバコを「トケイ」、時計を「マッチ」etc  

        B新造語錯語;新しい言葉をつくってしまう

        Cジャルゴン;全く意味のない言葉をとにかくベラベラしゃべる

 

 保続   : 前の記憶が残って、新しいものが認知できない。

        【例】鉛筆を見せると「えんぴつ」と言うが、次に時計を見せても「えんぴつ」と答える。

 

語健忘  : 物品の名前を思い出せない。失名詞ともいう。

 

 失文法  : 単語を組合わせて、文章を作る機能の障害。

非流暢性失語・ブローカ失語にみられる。

 

 復唱   :言語野の障害····· 障害される

言語野以外の障害 障害されない

反響言語      言語野周辺が広範に障害され、言語野のみが残っていると、復唱を要求されようがされまいが、何でも復唱する。エコラリアともいう。

 

失読   :字が読めない。失語症の場合は、漢字を読む能力は保たれているが、かなの方

が障害される。

漢字には意味があるから想起し易く、かなには意味がないから想起しにくい。

 

 純粋失読 :読む事が強く障害されるが、書字は障害されない。

 

 失書   :手に運動麻痺が無いのに字が書けない。

       最も難しいのが、自発書字。次に難しいのが書き取り

       書字の誤りを錯書という。

       写字は障害されないことが多い。

これも失読と同じように、漢字とかなでは分けて検査するべき。

Gerstmann症候群1つ(手指失認左右識別障害・失書・失算

 

 補完現象 :検者が決まり文句を言いかけると、先に終わりまで言ってしまう。

 

錯語図式:解剖学的根拠は希薄だが、臨床的に各失語症を理解するのに便利。

ブローカ失語(皮質性運動性失語)

 M(発語の中枢 注:発語を想起するわけではない)の障害。

 A(言語の了解 注:理解ではない)とB(概念中枢:言語の理解や自発言語の想起など)からの情報が遮断される。

 aABは残存しているので、話相手が何を言っているかの理解は簡単なことであれば可能。

 高度に障害されると、無言症になる。

ウェルニッケ失語(皮質性感覚性失語)

 Aの障害。

 BMに情報を送れない。

 BMmは残存しているので、自発言語は可能だが錯語になる。

伝導性失語(中枢性失語)

 AMの障害。復唱が障害される。

 【検査法】順唱:数字を7桁言って、復唱させる。

 BMmは残存しているので、自発言語は可能だが錯語になる。

超皮質性運動性失語

 BMの障害。自発語が障害される。言語野の障害はない。

 aAMmは残存しているので、復唱は保たれる。

ブローカ失語の回復期に多い。

超皮質性感覚性失語

 ABの障害。言語理解が障害される。言語野の障害はない。

 aAMmは残存しているので、復唱は保たれる。

 BMmは残存しているので、自発言語は可能だが錯語になる。反響言語になる事もある。

 ウェルニッケ失語の回復期に多い。

皮質下性運動性失語

 Mmの障害。

 aABMは残存しているので、内言語は正しい。表出する事が出来ない。

 末梢神経以下であれば、構音障害である。

皮質下性感覚性失語

aAの障害。

ABMmは残存しているので、内言語は正しい。自発語も正しい。

末梢神経以下であれば、視覚受容器や聴覚受容器の問題である。

全失語

自発言語非流暢で、言語了解・復唱・文字了解・音読・自発書字・書き取りの全てが障害さ

れる。

純粋運動性失語(純粋語唖)

自発言語復唱は障害。言語・文字理解・書字は保たれる。

ブローカ失語の回復期にみられる。

純粋感覚性失語(純粋語聾)

言語の了解のみの障害。それに伴って復唱と書き取りが不能。自発言語に異常はない。

ウェルニッケ失語の回復期または期にみられる。

言語野孤立症候群

復唱のみが残り、反響言語を呈する。補完現象がみられる。

健忘性失語

語想起の障害。錯語迂回操作(遠まわしな言い方)になる。

名辞性失語

健忘性失語とは異なり、語句の理解の障害。

交叉性失語

利き手と同側の大脳半球の障害により生じた失語。

失語症の責任病巣

失語症の責任病巣は一貫した見解がない。

故に、「ベッドサイドの神経の診かた」を参考とした。

ブローカ失語

ブローカ野および周辺領域

(中心前回下部・中心後回下部・頭頂葉弁蓋部・島葉など)の

皮質・皮質下の広範な損傷

中大脳動脈の閉塞が最も多い。

純粋語唖

左中心前回下部

ウェルニッケ失語

ウェルニッケ野。シルビウス溝後下縁から

上側頭回・中側頭回の後半部を中心とした領域。

中大脳動脈皮質枝の閉塞が最も多い。

純粋語聾

ウェルニッケ野

全失語

中大脳動脈の全領域

中大脳動脈の閉塞による。

伝導性失語

多様で、優位半球のシルビウス溝上下部に分散した障害

超皮質性運動性失語

ブローカ野前方から上方。

超皮質性感覚性失語

ウェルニッケ野の後方

 

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