カール12世の人となり


◆イギリス外交官の感想◆

[Back]

 ジョージ・ステップニーは当時ポーランドにいたイギリスの外交官であり、流暢なスウェーデン語を武器に、たびたびカール12世と親しく会話する機会を持ち、彼の人となりを観察することが出来た。

「彼は背の高い端麗な紳士であった」ステップニーはそう書き記している。

「しかし、身なりはひどく汚らしく、振るまいと乗り物は、貴方が若い男に想像するもの以上に粗野である。それは世評に違わぬ通りの有様。彼はザクセンでもっとも粗末な家に住む、もっとも汚らしい男の一人であろう。彼の住処の前ではどこもかしこも極めて美しき場所となり、もし諸兄らが彼の家の前で馬より降り立てば、埃が膝まで立ちのぼるはずである。

彼の馬たちは数本の手綱で繋がれ、飼い葉桶はない。馬には粗い上着が与えられ、腹、臀部、尾に至るまでかけられている。ここでは彼の馬たちの方が厩番らより良い服装だ。そしてその馬たちの内一頭は、常に走り出せるように待機の状態。これは彼らの主人が突然遠駆けに出るため。この王は供の者の準備も待たず、唯一人で馬を走らせ、冬であろうともおかまいなしに、時には一日48〜50マイルもの距離を駆け抜ける。膝まで泥に汚れるその姿は、あたかも馬車御者の様だ。

王の上着は簡素な青色。真鍮釦が付いて裾は裏返されて止められる。古びた革製のベストとブリーチは、彼の汚らしさを伝えるには充分すぎるほど油じみ、首には黒いクラバットを巻いている。もっとも、上着の釦は首までピッチリと留められて、付けているのか付けてないのかも、よく分からない。おまけに手袋も付けずに乗馬をするから、いつも彼のシャツや袖口はひどく汚く、大層しわくちゃ。だから手も袖口と同じ色で、ちょっと見には区別さえつきかねる。明るい褐色の髪は、油じみて、短く刈ってあり、指でなでつけることしかしない。櫛で髪を梳くことを知らぬと見える。

加えて座るのは、形式張った儀式の時をのぞけば、どんな腰掛けでも椅子でも構わない。見つけた椅子に座るのだ」

ステップニーはイギリス人貴族で、カールの外観や彼の清潔に対する意識の欠如に対し快く思っていなかった。彼の反感はカールの食事作法にも及んでいる。

「彼はナプキンをあご下に差し入れると夕飯を食べ始める。献立はたいがい大きなパンとバターである。酒類は弱ビールしか飲まず、流行遅れの広口コップから、それを口いっぱいに流し込む。広口コップ2杯分、だいたい英国式ボトル2本分がいつもの量。パンには肉一切れが挟まれ、バターは親指で塗られる。しかも食べるのが早い。夕飯に15分以上の時間をかけたことはなく、まるでそれはその辺の小百姓。そしてその間、一言も口をきかない。そうして食べ終わり立ち去ると、今度は同じ卓で彼の親衛隊が同じ食事を取るのである」

ステップニーの好奇心はカールが寝室で休息を取る光景にまで及んでいる。この寝室もまた他の物と同じように、イギリス人を不快にさせるものだった。

「彼の寝室は狭くて汚く、壁は粗末。寝台にシーツはなく、もちろん天蓋などない。代わりにキルトに似たものが敷かれ、彼はそれにくるまって寝る。寝台横の書き物用小卓は一本脚の細長い樅製で、ペン立てと砂箱も木製。彼の身の回りにあって唯一まともな物は、常に傍らにある金縁の聖書だけである」もっともステップニーにしても、ほんの僅かの寛容により以下のように付け加えている。

「彼はとても端麗な方である。良く整った顔は美しく、厳つさなどどこにもない」と。

だがその後にはやはり軽蔑混じりに 「しかし彼はとても奇妙であり、また積極的である。そのためいつ激発するかと、もしくは突然軍隊を進撃させやしないかと、すべての同盟者は彼を畏れている」

と書き、軍人王であるカールを観察している。同じイギリス人であるマールバラ公もアルトランシュテットの会談の後、軽蔑を露わにしていることから、ステップニーのこの感想はイギリス紳士が共通して抱く、嫌悪感を示していると言えよう。

Return Top


[人となり] [Top Main Page]

Copyright (C) 2001-2007 M.Ota All Rights Reserved.
このページに含まれる全ての文章・画像の無断転載を禁止します。