前回の7話から3年半以上が経ってしまい,『えるぴーわーるど』閉鎖されてしまいましたが,妄想SS『刻の向こうの少女』を再開します。



これまでのあらすじ



老人は一人の少女に出会う。老人はジュドー・アーシタといい。かつてのガンダムZZと呼ばれた白いモビルスーツのパイロットであった。そしてその少女は老人とかつて同じ刻を過ごした少女,エルピー・プルと瓜二つの姿をしていた。



その少女,プル・ミグトは普通の元気な少女であり,サイド1のあるコロニーでUC153の平穏な日を父親のレグリーとともに送っていた。

だが,そんな日々もザンスカール帝国軍の襲来,閃光に包まれたエアポート,そして白いモビルスーツとの出会いにより,終わりを告げる。

白いモビルスーツ,ガンダムと呼ばれる呪われた機体。

プル・ミグトはガンダムυ(ユプシロン)に乗ってしまった。そしてそれを操ってしまい,敵を撃破する。

プル・ミグトにはそれができた。普通の少女であったのに。

ニュータイプ。前の世紀のそんな言葉が周りの人間の脳裏に過ぎる。

そんなプルに強い興味を抱く連邦軍の中佐,バルト・バハッド,そのお付きの気のいいオタクな少尉,デルグ・ベヤナグ,ガンダムにひたすらこだわる少年のあどけなさが残るモビルスーツのパイロット,カケル・レガルス少尉,そんな大人達にプルは出会う。

そして,迫りくるザンスカール帝国で最も残忍だと言われるケリアム・ベルト特別戦闘部隊。遊びで人が虫けらのように殺されるあまりにも残酷な戦場。

プルは叫び,そんな敵を撃破するのであった。

その後,プルは鉄の船,スレイプニルとともに故郷を離れることになる。

そして,ベヤナグはある一枚のディスクの中でプル・ミグトと瓜二つの少女の姿を見つけるのであった。



『刻の向こうの少女』





第8話『少女の向こう側』





 虚空の宇宙に10歳くらいの少女が浮いている。漆黒の空間の中である。その暗さにプルは怖さと寂しさを感じつつ,何故か奇妙な懐かしさのようなものを感じていた。そして,その状況が今の自分を表しているかのように感じた。

 少女は宇宙の中に身をまかせる。



 少女の名前はプル・ミグトといい,今はモビルスーツのシミュレーターの中にいた。なぜ,わずか10歳の少女がそんなところにいるのかというと,彼女が白いモビルスーツ,ガンダム・ユプシロンのパイロットであるからだ。何でそうなってしまったのか,どうしてそんなことができたのかは,彼女自身にもわからない。



 しばらくしてその漆黒の空間に光が差し込む。シミュレーターのハッチが開かれたのである。プルのいた空間は,地球連邦軍所属,機動打撃巡洋艦スレイプニルのモビルスーツデッキの傍らに設置されたシミュレーターの中であった。

「今のが宇宙空間をそのまま映した場合の映像だ。」

 と少年のあどけなさを残した連邦軍の少尉が言う。カケル・レガルス少尉である。



「そのままの映像だと怖いだろ。」

 少し脅したようにカケルはプルに言う。

「怖いけど・・・」

 「懐かしい感じがした」と言いかけてプルはやめる。何故だかわからないが,その感覚とモビルスーツを操縦できて,敵を退けることができたことが関係してそうで不安になるためだ。その不安を人には知られたくなかった。ずっと前から感じていた不安,自分が他の人と違うのではないかという感覚,人の見えないもの,聞えないものを感じ取れる,そうした感覚である。

 そんなプルの様子に気づいていないのか,カケルは続ける。

「宇宙空間そのままを360°映したら訓練されたパイロットだってかなりの重圧を感じてしまうって話だ。場合によっては,その怖さでパニックになってしまうことだってあるっていう。だから,コンピューターグラフィックにした際に少し宇宙を明るく補正しているというわけだ。」

 まだ,子供であるプルに対して知ったか振ったようにカケルは言う。容姿相応にか,カケルにはそう言った子供っぽいところが多分にある。



 そして一方,スレイプニルの司令室では,画面に映し出された映像に見入りながら,この部隊,連邦軍第1方面軍第7実験戦隊の司令バルト・バハッド中佐が言う。

「なるほど,貴官が見たというのはロリコン盗撮雑誌ではなかったというわけか。」

「はあ・・・まあ・・・」

 というバルトの問いかけに,デルグ・ベヤナグ少尉は少し気のない返事をする。

 画面には,10歳くらいの肩まで下がったもみ上げが特徴的な少女の姿が映っている。

 ベヤナグがバルトに渡したのは昔のアニメの特典ディスクである。このディスクの中の出ている少女と新兵器であるガンダム・ユプシロンを操る少女プル・ミグトがあまりにも似ていたため,ベヤナグはバルト中佐に報告をしたのである。普通軍隊ではこんなアニメの特典ディスクを持ってきても失笑を買うことであろう。だがバルトは普通の感覚の軍人ではない。そしてこの特典ディスクに出ている少女もニュータイプと記されていたからだ。

「『装甲下の天使たち』か・・・懐かしいものだ。私も結構好きだったよ。いい年をしてこんなものを,と兄にはずいぶん馬鹿にされたがね。だが,こんな特典まで持っているとはさすがはベヤナグ少尉だ。」

 と,バルト中佐はなんとなくうれしそうである。

「しかし,このアニメ元ネタがあったとはな。確か放映は140年代だったはず。作者は139年あたりの機密文書公開でこのニュータイプ部隊とやらのことを知ったというわけか。待てよ,前の世紀の88年,89年・・・,ハマーン戦争時のネオジオンのニュータイプ部隊・・・」

 ますますバルトはその資料に引き込まれる。

「ハマーン戦争,ハマーン戦争,ハマーン戦争!そうか・・・これで繋がる!あのご老人!」

 そんなバルトの様子にベヤナグはこうなることはわかっていたものの,やはり報告すべきではなかったと少し後悔するのであった。だが,ベヤナグにとってプル・ミグトの存在,そしてその能力は気がかりであり,その秘密に繋がるかもしれない手がかりを得たにもかかわらず,それを黙殺することはできなかった。現にプル・ミグトは彼らの部隊で最強の戦力であるガンダムを操っている。そのプル・ミグトがどんな能力を持っているのか,そしてその存在に何か秘密が隠されているのか,軍人として現在展開されている戦力とその現状を把握するためにも,これを解く鍵を上官である中佐に報告しないわけにはいかないと考えてしまった。

 ベヤナグがそんなことを思っているうちに,資料に目を通していたバルトは再び口を開く。

「エルピー・プル,UC0078年3月8日生まれ・・・プル・・・名前まで同じとは,ますます運命的なものを感じるな。いや,必然なのかもしれんがな・・・

 そして,数字で呼ばれる妹たちか。」

 バルトはリモコンを操作して画面を変えていった。

 そして,画面には先程のエルピー・プルと瓜二つなのだが,プルツーと示された目つきの鋭い少女の姿が映し出される。

 バルトがさらにリモコンを操作すると,またエルピー・プルと瓜二つなのではあるが,今度は感情のないような無機質な表情の少女達の画像が映し出されていく。

「ハマーン戦争におけるクローンによるニュータイプ部隊。まあ,そう言う話は聞いたこともあったが,私としたことがこのネタをチェックしておかなかったとは迂闊だったよ。もしかして,この部隊に生き残りがいた?その生き残りが今日までコールドスリープされていたのが,プル・ミグト嬢ということか?」

 とバルトは突拍子もないことを言い始める。

「ですが,照会の結果,あの子はエレメンタリースクールに入学の時からの在籍記録はありましたよ。ついでにキンダーガーデンの方も。」

「・・・そうか・・・ならば,生き残りの子孫という可能性は?30年ちょいで一世代と考えると孫だな。20年ちょいで一世代と考えるとひ孫か?」

 バルトはブツブツと言い出す。

「隔世遺伝にしては似過ぎの気もしますが。」

 ベヤナグが少し気のない返事をする。

「そう言えば,プル・ミグト嬢の母親はどうしているんだ。あの子の母親なら相当の美人のような気もするのだが。」

「母親の方についても照会しましたが,レグリーさんとはあの子が生まれて間もなく離婚してしまっているようですね。」

「レグリー殿,捨てられたか。哀れな・・・」

「母親の方は現在の年齢は52歳のはず,離婚後は別のコロニーに移住しているようです。」

「52歳・・・レグリー殿は確か38歳だったはずだから,ずいぶんと年上だな。まあ,パッとしないレグリー殿が若さで美人の母親をゲットしたということか。
 まあいい。ベヤナグ少尉,母親のことを情報部に調べさせてくれ。あのレグリー殿がこのニュータイプ部隊の少女の血を引いているとは思えんし。
 あと,ニュータイプ部隊の詳しいデータを調べたい。そうだ,司令部付き資料課にいるレリミンス中尉に連絡を取ってくれ。この少女達の資料を徹底的に調べてもらいたい。」

と再び画面に映ったエルピー・プルと名が示された少女を指しながら,バルトはベヤナグに言う。

「レリミンス・リアース女史にですか?」

「クク・・彼女が資料課にいてくれたのは運がいいよ。そうだ,いっそのこと調査が終われば彼女ごと来てもらえばいい。ユプシロンの重力間テストをやるダブリンベースで合流というのでいいだろう。資料課で腐っているから飛んできてくれるだろう。ゲベル中将には私から許可を取っておくよ。」

 レリミンス・リアース女史。女史というのはあだ名である。バルト・バハッド中佐のかつての部下であり,優秀な作戦家ではあった。しかし,いささか出世欲が強すぎたためか,協調性に欠けたためか,周りに煙たがられて,やがて中央からは遠ざけられ,徐々に出世コースから外れていった。そして今では地球連邦軍の資料課勤めとなっている。

「了解・・・」

 その言葉を聞くとバルトはリモコンを操作して画面を変えていった。

 そして,画面には先程のエルピー・プルと瓜二つなのだが,目つきの鋭い少女の姿が映し出される。

「プルツー・・・数字で呼ばれる少女達か。」

 とバルトはぼそりと呟く。何となく居心地の悪さを感じてか,ベヤナグはそれを誤魔化そうとベヤナグは口を開く。

「ニュータイプ部隊って,ネオジオンのグレミー・トトの反乱で使われた部隊ですよね。それにしても高々17歳やそこらで反乱って無謀すぎる話ですね。まあ,このニュータイプ部隊の子達も10歳やそこらなのではありますが。」

 とベヤナグがバルトに言う。そこには,わずか10歳の少女であるプル・ミグトを戦いに使おうとする自分達への皮肉も少し混ざっていた。しかし,バルトはそんな皮肉にも気付かないかのように答える。

「いやいや,戦乱の世に男児として生を受けたからには,万余の軍を率い平原を疾駆し,世の英傑達と知勇の限りを尽くし天下を争ってみるのもまた一興。そう思わんかね。」

「はあ・・・まあ・・・私にはそこまでの勇気はありませんから・・・」

 ベヤナグは,やっぱりこの中佐はこんな人だと思う。

「ところでこのエルピー・プルという娘の場合,プルというのはファミリーネームなんだろ。だったらこのプルツーという娘,むしろエルピーツー・プルになるべきじゃないのかね。」

「知りませんよ。」

 ベヤナグはそっけなくそれに答える。



 一方,スレイプニルを追うザンスカール帝国軍ムッターマ・ズガン元帥旗下のカリスト級巡洋艦エウテルペにおいても,友軍のアマルテア級戦艦クリシュナ,カリスト級巡洋艦メラムプスおよび補給艦と合流,そして補給が行なわれていた。また,エウテルペには,パイロットおよびモビルスーツの補充が行なわれる。



「これで3艦というわけか。」

 とエウテルペ艦長,エルスト・デルレムは呟く。

「旗艦の方でケリアム・ベルト特戦隊の連中引き取ってくれると有難いのですが。」

 と副長がエルストに言う。

「何かと理由をつけて引き取ってくれんよ。あんな厄介な連中誰だって関わりあいたくないだろう・・・全く・・・まあ,掛け合って見るには駆け合って見るが・・・」

 エルストは疲れた声でそう答える。先の戦闘でコロニーの破壊および一般市民の大量虐殺を行なったケリアム・ベルト特別戦闘部隊,彼らの戦闘力は傑出したものではあるが,残虐さはそれ以上であった。確かに彼らの作戦は,圧倒的な残虐さにより敵の戦意を喪失させようというものである。一罰百戒,言うなれば‘一城皆殺しの計’である。最もケリアム・ベルト達はどこまでそのことを意識してやっているのかはわからないが。

 とは言うものの,はっきり言ってこんな厄介な連中とは関わり合いたくはない。ムッターマ・ズガン元帥お気に入りの暴力装置であっても,このような連中はやがては切り捨てられる。そう言った存在である。その時に巻き込まれたりしたら,堪ったものではない。



 その頃,エウテルペのモビルスーツデッキでは,金髪の少年が一人物思いに拭けりながら自分の愛機を眺めていた。少年の名はデロッサ・テラスといい,白面の若武者という言葉が似合いそうな雰囲気の美少年と言えばいいだろう。そんなデロッサはいきなり声をかけられた。



「デロッサ先輩!」

「お久しぶりです。」



 そう言って,デロッサのところに10代半ばぐらいの少年と少女が駆け寄ってくる。少年は短髪でデロッサよりもやや背が高く,少女の方は伸ばした赤毛を後ろで結っており,パイロットとしてはやや華奢な体つきと幼い顔つきから実際の年齢より幼く見える感じである。彼らがエウテルペが向かえた補充のパイロットである。



「ゲイリグ,イアラ,もしかしておまえ達が補充のパイロットなのか?」

「はい,戦時短期過程で自分達も初陣を飾れることになりまして。」

 ゲイリグと呼ばれた少年が答える。

「デロッサ先輩とご同行できて光栄です。」

 イアラもそれに続く。



 そんな挨拶を交わしつつも,デロッサはこの二人を見てやや複雑な表情をする。はっきり言って初陣からの戦績はさっぱりなものだったからだ。先輩と彼を慕う二人にはあまり語りたくない話である。ガチ党幹部の母を持ち,自分自身もエリートとして周囲から期待されてきた彼からするとどうしてもそう思ってしまう。



「何だあ!ここはいつからハイスクールになっちまったんだあ!それともジュニアハイかあ!」

 ばつの悪そうな顔をしていたデロッサはいきなり後ろから声をかけられてギクリとする。ザンスカール帝国軍で最も残忍と言われるケリアム・ベルト少佐である。さっきまでガンダムのパイロットを惨殺してやるといきり立っていた。こんな時に下手に刺激すると味方でも何をされるかわかったものではない。

「我が栄光の帝国軍も落ちたものだ。こんなガキがパイロットとはな。」

 後ろから来たデリーがゲイリグとイアラを見てそう言う。そしてバイガルがイアラをジロジロと見ながら続ける。

「嬢ちゃんみたいなのがパイロットか。敵に捕まんじゃねえぞ!捕虜になったら,連邦の連中にうれしい補給を与えちまうことになって,大喜びさせてしまうことになるからな。ケッケッケッ!」

 そう言いながら,下卑た笑いを浮かべるバイガルにイアラはすくむ。

「やめてください!」

 デロッサはイアラを後ろに庇いながらそう言う。

「はあ!白馬のナイト気取りかよ!ろくな戦果もないヒヨッコがよく言うぜ!」

 ゲラゲラと笑いながらケリアム・ベルト達は立ち去っていった。何事もなかったことにデロッサは心底ほっとする。一瞬で汗びっしょりになってしまった。足も少し竦んでいる。

「デロッサ先輩,ありがとうございます。」

 そんなイアラの声にデロッサが振り返ると彼女はデロッサに憧れの眼差しを向けていた。無条件に頼れる先輩と彼女はデロッサのことを信じきっているようであった。そんな眼差しである。今の自分にそんな力があるのだろうか・・・そんな疑念がデロッサの中に渦巻く。

 隊の編成では,結局,彼ら二人は戦時階級で昇進したザイガ大尉の隊に入ることになった。デロッサ自身は今までどおりリアム中尉と組むことになる



 スレイプニルの方でも予定していた補給艦とランデブーを行なっていた。正規のパイロットがカケルのみとなってしまっているスレイプニルにはパイロットの補充が急務であり,バルトはドッキングコンベアの節舷部まで出迎えに出ていた。そこへ二人の男がスレイプニルの入艦してくる。軍帽を浅めに被り,軍服を少しだらしなさげに肌蹴させた騒がしそうな男と,深めに被った軍帽から目だけはギロリと鋭い眼光を放っている寡黙そうな男である。

 バルトを見つけて,騒がしそうな男の方が大声で声をかける。

「バルト中佐!自分達をこんな面白い状況に呼んでくれて,感謝感激であります。」

「で,中佐,我々の任務は?」

 軍帽を深めに被った男もそれに続ける。

「ご苦労,カッゼン大尉,マイヤー大尉。また,貴官達の手を借りることになったよ。」

 バルトは少し楽しそうに言う。この二人はバルトと知己である。騒がしそうな方がロバラス・カッゼン大尉,寡黙そうな方がゲシュルト・マイヤー大尉である。

「わずか10歳の女の子がガンダムを操縦しているって話ですが,やっぱり中佐のところには面白い話が転がり込んできますね。」

 カッゼンと呼ばれた大尉も楽しそうに答える。

「クックック,プル・ミグト嬢はいい子だよ。後で紹介しよう。」



 彼らの機体であるVジャベリン・スナイパータイプも続いて搬入される。Vジャベリンのセンサーの強化およびVSBRに繋ぐエネルギーを狙撃用に回したカスタムタイプである。さらにVジャベリン4機とそのパイロットも合流する。



 その頃,艦の食堂で一人の老人が手持ち無沙汰に朝食後の時間を潰していた。食事のメニューは無重力空間用のチューブに入ったスープ,目玉焼き,サラダであった。俗に言うチューブ飯というやつである。重力間での食事内容に比べれば殺風景なものであるが,少しでもうまく食べられるようにこれまで改良を重ねてこられたものである。無重力空間用の食事としてはチューブ飯以外にも,バーガーやサンドイッチ,時には握り飯,そしてご馳走としてスシなどが供されることもある。

 まあ,今はそんなことはこの老人にはどうでもよかった。老人の名はジュドー・アーシタといい,成り行きからスレイプニルに同道することになったのである。老人はかつて少年時代にガンダムのパイロットであった。そして少年の頃に同じ刻を過ごした少女と瓜二つの少女,プル・ミグトと会ってしまったことが同道のきっかけである。老人の知っていた少女と同じようにモビルスーツを操縦できてしまう少女と会ったことが。


 
そんな時,ジュドーは少女に声をかけられる。

「おはようございます。」

 遅めの朝食のプレートを手に持ったプル・ミグトの姿が目に映る。昨日の戦闘が嘘であるかのようにその声には元気さがあった。そう,かつて老人が知っていた少女と同じように。最も老人が知っていた少女はあまりこう言う丁寧な言葉遣いはしなかったが。

「ああ,おはよう。」

 ジュドーもそれに返す。

 プルがスレイプニルに乗艦してからジュドーと会うのは初めてである。ただ,この老人がスレイプニルに乗っていることはすでに聞いていた。

「おじいさん,おじいさんって昔ガンダムのパイロットだったんだよね?」

 プルはジュドーの正面の席に座りながら,そう尋ねた。

「何故それを?」

 少女にはそのことを話していなかったはずである。

「カケルが言ってたよ。」

(あの少尉か・・・)

 昨日,自分にかつて乗っていた機体ガンダムZZのことやその時の戦歴を尋ねてきた少年のあどけなさが残る少尉の顔が浮かぶ。自分がガンダムのパイロットだったことがわかると,そういうことを尋ねられるのは珍しいことではなかったので,いつものように適当に応対していたことも思い出す。

「だからわたしのこと,気にしていてくれていたの?」

 とプルが言う。

「いや,それだけじゃない。それだけじゃ。君のような子供がモビルスーツに乗るなんて,もうあったらいけないことなんだ。」

「もう,って?おじいさんも子供の頃ガンダムに乗っていたから?」

「・・・・・」

 ジュドーはこの子にまだ話せていなかった。少年の頃知っていた少女エルピー・プルのことを。プル・ミグトと瓜二つの少女のことを。その少女は戦いの中に散っていったからかもしれない。自分と瓜二つの名前までが同じな少女のそんな運命を聞いたらこの少女はどう思うのだろうか。だからこそ話すべきかもしれない。そうしないとこの子も自分が失ったエルピー・プルと同じ運命を辿ってしまうかもしれない。やはり話すべきなのだ。ジュドーが口を開こうとしたその時。

「だったら教えて,ガンダムって何?」

 プルが尋ねた。

「あの怖い人達もガンダム,ガンダムって・・・それにカケルも,あの中佐もガンダムって。どうしてそんなにこだわるの?あの子が・・・あのモビルスーツがガンダムじゃなかったら,違うの?」

「ガンダム・・・モビルスーツの名前に過ぎないよ。ただの兵器さ。」

 ジュドーはそう答える。

「でも,みんなおかしいよ・・・この前,わたしがあの子のこと・・・あのガンダムを怖い人達に渡してしまおうとした時,あの人達はガンダムを壊そうした。兵器だったら手に入れたら満足するでしょ・・・でも,あの人達はあの子に何か恨みでもあるように・・・」

 おかしい,確かにおかしい。どこか時代が狂気じみている。その感覚はジュドーにもわかった。何か昔と異なるそういった感覚は否定できなかった。ザンスカール帝国が起こしたこの戦争はおかしい。かつて自分が参加した戦争もおかしかったが,それとはまた違うおかしさをこの戦争に感じていた。そしてこのおかしさがまた。

「そしてあの人達はみんな壊した・・・街も人も・・・みんな・・・みんな・・・何で,何でなの・・・そんなおかしいよ・・・おかしいよ・・・」

 プルは続けながら,その目には涙が浮かんでいた。もう何を言っているのかわからない。感情だけがあふれ出てくる。

「もうやだ。そんなのやだ!怖いのやだ!」

「だから,もうモビルスーツに乗るのはやめるんだ。子供があんなものに乗っちゃいかん。」

「でも,怖い人達が来ちゃったら・・・」

 プルは涙を手で拭いながら答える。

「そんな時は大人が何とかする。そのための軍隊だ。」

 とは言うものの,この艦の軍人たちの顔を思い浮かべると。パイロットはあの少年とも言えるカケルと呼ばれる少尉ぐらいなものである。そして,あの何を考えているかわからない指揮官のバルト中佐に,そのお付きの少し頼りなさげなベヤナグ少尉。と,いまいち当てになりそうもない連中であった。

「でも,この艦の人達コロニーから出て行こうとしていた。それにみんな踏み潰されちゃったんだよ・・・みんな・・・やだよ・・・やだよ・・・」

 プルはあの時のことを思い出して,また少し泣き出していた。あの時の恐怖を思い出してしまったのだろう。モトラッド艦に自分の街が踏み潰されて言ったあの時のことを。そして野獣とも言えるようなザンスカールのMS隊になぶりものにされた時のことを。

「その時は俺が。俺が・・・」

 今の自分にはもうその力がない。そんなことはわかっているでもそう言うしかなかった。しかし,プルはそんなジュドーの無理を感じ取ってしまっていた。

 そしてプルは大人達に不信感を持っていた。それと同時に自分のもつ不思議な力にも気づいていた。ただ,まだそれで何ができるのかはわからなかった。

「そんな無理だよ・・・無理だよ・・・そして怖い人達は何も聞いてくれない。いなくなってくれないもん。だから・・・」



 だから・・・だから,どうすればいいかわからない。もう怖いのはいやだ。でも戦えてしまう不思議な力。そして聞こえてくる感じられる不思議な感覚。ガンダムの中で自分がどんどんシャープになって行く感覚。周りの空間そのものと融合し,状況を体そのもので感じていけるような。

 そして,このおじいさんは優しいってわかるけど,おじいさんも含めて周りの大人達は何かを隠しているようにも感じていた。

 迎えに来てくれたお父さんも何かを隠している。それは昔からどこか感じていた。お母さんのこととか。プル・ミグトは母親の顔を知らなかった。彼女が生まれてまもなく離婚したらしい。写真すら残っていなかった。お母さんの事を聞くとお父さんは辛そうな気まずそうな顔をするからほとんど聞かないようにしていた。そんな暗黙の了解で昔からそうしていた。

 そういったことを含めて,少し不自然に感じていた。具体的に何かというわけではないけど,それぞれが何であるかを知っていると言うわけではないが,自分には見せないように何もかもをオブラートで包んでいくような,そんな半透明な世界にしようという感覚である。

 だから,怖い現実は近づいていてもわからない。いきなり目の前に現れて咽元に喰い付いて来るまで。



 今,プル・ミグトはそんな世界に一人その身をさらけ出していた。











3年・・・このアナベル・ガトーは3年待ったのだ!

プルツー「誰がアナベル・ガトーだ・・・」

いや・・・それくらい開いてしまった。

プルツー「はっきり言って誰も前の話なんて覚えていないぞ。というか読んでくれている人いるのか,この話。」

・・・・・・・

プルツー「それにしても『装甲下の天使たち』って何だーーー!何で私達がアニメなんだ!」

いや・・・プルたん達の頃から半世紀以上過ぎたVガンの時代だと,一年戦争とかジオンとかは格好のゲームやマンガやアニメのネタの宝庫かと思いまして。しかも美少女まで!

プルツー「・・・・・・」

ジオンというノスタルジー。ニュータイプというオカルティズム。ガンダムの世界の人間にとっても,まさにマンガの格好のネタ。

プルツー「ふざけるなーーーーーーーー!いっけーーーーーー!ファンネル!」

ぎゃーーーーーーーーーー!

(ドッカーーーーーーーーン!!!ジャミル・ミートは灰燼と化した・・・)



 取りあえず新キャラ紹介

 ロバラス・カッゼン

 連邦軍のパイロット。階級は大尉。年齢は20代後半。バルトとは旧知の仲らしい。結構しゃべり。プル・ミグトのような子供がガンダムに乗ることも面白がっているような男だから,ある意味バルトとは同類か。



 ゲシュルト・マイヤー

 連邦軍のパイロット。階級は大尉。年齢は20代後半。この人もバルトとは旧知の仲。寡黙な男。



 イアラ・キルーク

 ザンスカール軍の新米パイロットの少女。15歳。戦時短期過程を経て,エウテルペに配属される。デロッサの後輩にあたり,彼を慕っている。華奢な体つきと幼い顔つきから実際の年齢よりも幼く見られることが多い。



 ゲイリグ・バルレン

 イアラとともに配属されたザンスカール軍の新米パイロットの少年。15歳。背はデロッサよりもやや高い。



プルツー「まあ,次の話はいつになるかわからんが,見捨てないでやってくれ・・・」

もし皆様の感想いただければ,とてもありがたいです。よろしくお願いします。







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