天使の住むところ
「天使の住むところ」
ずっと遠くなる。あの船が。
彼はどうしたのだろう。彼女はどうしたのだろう。
住み慣れた居場所=Aいいことも悪いこともあった想い出=B
遠くに浮かぶ……悲しい閃光が消え、彼女の思いが宇宙(そら)を伝う。
いろんなことのあった人生だった。カプセルの中で外の世界に思いを馳せ。
閃光から逃れた世界で悪夢を見て。
助け出されて、世界の果てで人の暖かさを感じて。
若い心に出会い、愛してくれる人の思いを感じ、命懸けで守ってくれたあの人の悲しみを感じ。
赴くままに走り出し、赴くままに戦い、赴くままに運命を―――
出来るだけ伝えたかった。出来るだけ愛したかった。
この世界を。でも私は飛び出してしまった=B
後悔は無いかと言われれば、何所を後悔すればいいのか未だに解らない。
でも、やるだけの事をした。それも考えることが出来なかった自分£Bの分も含めて。
悲しみに満ちた世界が今度は優しくなりますように。
それだけを祈ってから星の海を渡ってゆく。
誰かが呼んでいる気がした。私の中に入る暖かい心が。
―――――おーい!―――――
誰?
―――――おーい!―――――
何所?
―――――ここだよ!―――――
目の前に光。眩しくて見ずらい。
―――――プルツー、あれ、あれ!―――――
―――――ここだ! ここだ!―――――
何故だろう。さっきまで生きていた℃桙フ、重い鎧のような悲しみが脱げて行くような。
―――――間違いないよ! ―――――
―――――こっちだ!!―――――
どこかで見たような記憶が。そう、あのスーツを着る前の、ヘルメットを被る前の。
―――――早く! 早く!!―――――
―――――さあ、こっちだ!―――――
もう涙が出る体も無いのに、胸が熱くなり何かが迸りそうになる。
―――――頑張ったんだね! よく頑張ったね!―――――
二人の少女が手を振っていた。満面の笑顔。
一人は両手を思い切り振りつつ、目頭を拭いている。
もう一人は片手を振って励ますように。
あれが天使というものなのだろうか?
まるで昔、私達が戦場に出て征くときの彼女達≠サのものだった。
―――――遂に最後の―――――
―――――みんな、来ちゃったな。姉さん―――――
天使が両手を掴む。
―――――さあ、行こう!―――――
―――――何があったのか、教えてくれないか?―――――
天使達にせがまれながら光の中へ飛んでゆく。
―――――ねえ、教えてよ!―――――
その顔は、既に知っているのかもしれない。でも、自身から聞きたいのかもしれない。
出来るだけ答えることにした。私が辿ったこと、私が私が守ろうとしたこと、そして……
―――――ええ、お姉さん―――――
私が見守っていきたいことを。
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