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36話シリーズ番外編

 

ジュドーの遺書






  「ふんふんふ〜ん♪ 今日のメリーさんの羊はしょうゆ味〜♪ 明日のメリーさんの羊はケチャップ味〜♪ 明後日のメリーさんの羊はカレー味〜♪」

 などとくだらない歌を歌いながら,航行中の艦の中で一人の水兵が部屋の掃除をしている。水兵が軍艦の居室を掃除しているのは特に変わった光景ではないが,それはかつてのエウーゴ歴戦の強襲巡洋艦アーガマの一室であった。

 戦争が終わり,大規模な改装のためドック入りするとの噂もある。そのまま解体されるとの噂もある。とにかくそんなわけで艦内の不要品を整理する必要があった。とは言っても残っている仕事は残留品のチェック程度のことであるが。

 水兵は部屋に備え付けてある机の掃除をしている時,偶然引出しの中に残っていたものを見つけた。それは一枚のビデオカードだった。

  「エロビデオかな?ラッキー!」

 この部屋の前の使用者の忘れ物だろうが,長い間使用されていなかった部屋だけにもらっといても問題ないだろうって思った。

  「エロビデオ〜♪エロビデオ〜♪」

 男臭い環境で過ごしているせいかビデオの内容を勝手にエロビデオと決め付けていた。



 ワクワク,ワクワク・・・。

 一日の仕事も終わり,居室でさっきパチってきたビデオカードをデッキにいれる。二人用の部屋だが,同居人はいない。艦の搬送のためだけの航海であるため,定数には程遠い程度の要員しか乗艦していないためである。

 そしてビデオの再生が始まる。

 画面には少年がベッドに腰掛けてカメラに向かっている映像が映し出される。

  「げっ,まさか少年ホモもの?!」

 完全にエロビデオだと勝手に思い込んでいたため,そんな反応をしてしまう。



 画面に映っている少年は10代半ばぐらいの年齢と思われる。そして少年は語り始める。

  「えと・・・,何ていうか・・・プル・・・,俺思ったんだ。なんか俺らしくないかもしれないけど・・・もしも,もしもだ。この戦争で俺に何かあったら,その時は・・・プル・・・おまえのことが心配で。だから俺はおまえに伝えておきたいことがある。」

 どうやらエロビデオとは違うらしい。

  「もちろん俺もこんな戦争で死ぬつもりなんて全くない!けど,でも現実はどうなるかわからない。リィナのことがあって・・・俺もいろいろ考えたんだ。それで,その時残されてしまうおまえのことが心配なんだ・・・」

 どうもこのビデオは遺書のようである。何で少年が軍艦の中で遺書なんかを書いているのかと不思議に思ったが,まあ何て言ったってあのアーガマなのだ。何でもありなのだろう。人の遺書を盗み見するのは悪いこととは思いながらついつい続きを見てしまう。

  「アーガマに来てからプルはずっと俺と一緒だったよな。俺のこと大好きだって言ってくれてるよな。だから余計に心配なんだ。最近はエルとなんかいっしょにアーガマの仕事手伝ったり,みんなにも馴染んできてくれてるけど・・・でも,もし俺がいなくなったら,その時おまえがどうなってしまうかって。どうしていくのかって。でもさ,俺は俺の知っている本当のプルならそれを乗り越えられるって思うんだ。」

 映像の中で少年は語りつづける。

  「プルはアクシズでの生活が寂しかったって言ってたよな。だれもプルのことをかまってくれなくって,自分のことを見てくれななかったって。でもそうだけど,そんなのだったけどプルは明るくって,元気で,本当はとても思いやりがあるって俺は知ってる。リィナがいなくなって俺が落ち込んでいた時もプルは必死で俺のこと元気付けてくれたよな。」

 少年はしばらく黙ってそれから再び語り出す。

  「だから,そんなプルだから,やさしい心を持ったプルだから,もし俺に何かあってもそのことで誰かを恨んだり憎んだりするのはしないでほしい。そして絶望なんてしないで欲しい。こんなこと俺の言うようなことじゃないでけど,まだプルの見たことのないものっていっぱいあると思うんだ。」

 水兵は少年がプルという名の子に語っているのだと理解した。そしてそのプルという子が少年の恋人なのか何なのかはわからなかったが,少年よりも年下らしい。そんな子供が軍艦にいたということはやはりアーガマというやつは本当に特別製だってことだと思った。そしてビデオの中では少年が語りつづけている。



  「そんな世界を見てプルも新しい自分を見つけられると思うんだ。だから俺の知っている,俺の好きな・・・明るくて元気なプルになれると思う。」

 少年は少し照れながら語る。

  「プルは言ってくれたよな,元気じゃない俺って俺らしくないって。でももっと元気なのがプルだろ。だから俺のことで悲しんでもいいけど,必ず,必ず元の元気なプルに戻ってくれ。約束だからな。」

 そう言った後,少年はしばらく画面の中で黙り込む。そして突如。

  「な〜んて言ってるけど,心配するな。俺ジュドー=アーシタよ!こんな戦争で死なないって。もしさこのままこの戦争が終わったら,みんなといっしょにシャングリラへ行こう。そうしたら・・・あ,そうか,その場合はプルはこのビデオ見てないんだし・・・そうだよな・・・。とにかく元気なのがプルなんだから忘れるなよ。」

 やはり気恥ずかしいものがあったのかもしれない。遺書としてはいささか不恰好なものになっている。だが,少年のプルと呼ばれる少女に対するやさしさのようなものは伝わってきたから,それでいいのかもしれない。ビデオはリモコンを操作する少年の姿を最後に終わっていた。

 水兵はその後その少年とプルと呼ばれていた子がどうなったのだろうと考えた。だがすぐに

  「ジュドー・アーシタ?もしかしてガンダムZZのパイロットをやっていたという少年のことか?確かハマーン・カーンを討ち取って,その後復員して木星に行ったって話だよな。そうか・・・なら,ジュドーって奴が生きているってことは,少なくともこの遺書はいらなかったってわけだよな・・・」

 と水兵は思い返した。

 それでもどうも何か居心地が悪い・・・というかこんなビデオを見てしまって自分が気恥ずかしい。そんな思いを抱きながら水兵はその晩は床についた。



 次の朝,やはり昨晩のビデオのことが頭に残っている。というかどうも思い返してしまう。遺書なんて気恥ずかしいものを書く心境を。そして何となくビデオカードで手遊びをしながら甲板上に出る。風に当たりたいような気分だったのかもしれない。ちょっとした式典のため艦は低速運行に入っており,風は強いが甲板上に出ることはできた。

 水兵はビデオカードを手の中でいじりながら,ぼおっと遠くを眺めていた。そんな時,突然風にあおられる。やさしい風だったのだが,思わず手の中にあったビデオカードが手を離れ,舞って行った。

  「しまった!」

 と一瞬思ったが,

  「まあどうせもう不要だったものだし,別にいいのかな・・・。」

 と自分に言い訳をする。

 ビデオカードは風に舞って行く。



  「こら,そこで何をやっている!早く集合せんか!」

 唐突に水兵は上官に怒鳴りつけられる。今朝は手の空いているものは黙祷とやらを捧げるために集合しなければならなかったことを思い出した。

  「やべえ,やべえ」

 水兵は大慌てで集合場所の甲板へと走る。



 10月31日朝,アーガマはダブリン上空を通過していく。













 次は長編とか言っておきながら36話シリーズの番外編・・・基本的に遺書は『ポケ戦』のバーニィからアルへの最後の指令のビデオをパクったものです。何となくそんな感じで作ってしまった・・・

 もしジュドーが死んでプルの方が残されたらどうなるのか?そんなことを考えてしまいましてこんな話を・・・まあ戦争なんですからそういう可能性もあるわけで・・・

 変な話になってしまいましたが感想待ってます。あと長編の方は第1話はできているのですが,もう少しできてから投稿しようかと思っていまして・・・こっちの方もよろしくお願いします。











 以下蛇足・・・(爆)

ジャミル=ミート「何でじゃーーー!何で拙者がこんなもの書かなければならんのじゃーーー!ジュドーはシスコンじゃーーー!」

プルツー「なら書かなければいいだろ!」

ジャミル=ミート「ジュドーの遺書なんぞ!「リィナ,リィナ,俺の愛しいリィナー!」で十分じゃーーー!それがジュドーに似合っておるはーーー!」

プルツー「こいつ・・・そうとう病んでるな・・・」

ジャミル=ミート「ジュドーのシスコン!シスコン!シスコン!ダメだ,こんなものを書いてしまったから拒絶反応が・・・もっとジュドーの悪口を言わねば・・・ぐはっ!」

プルツー「拒絶反応・・・?」

ジャミル=ミート「ぐばららら,ま,間に合わん!たうばりゃあああーーーーー!」

バシューーーーーーーー!!!

プルツー「・・・爆裂した・・・?そこまでひどかったのか?(まあどうせすぐに生き返るのだろうけど・・・)」


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