【コース】 距離:約5.9km
市北西部の文化の家周辺をめぐるコースです。新しい住宅地や田園地帯に位置する社寺と,長久手の戦いの史跡のうち北西部のある一部をめぐります。
≪コース≫ リニモ・はなみずき通駅〜豊善院〜聚福院〜大平公園〜木下勘解由塚〜原邸公園〜直会神社〜豊龍院〜長久手市文化の家〜桧ヶ根公園・堀久太郎秀政本陣地跡・市立図書館〜後山公園〜常照寺〜リニモ・はなみずき通駅
![]() (国土地理院発行 1/25000地形図を利用して作成) |
今回のスタート駅はリニモ(東部丘陵線)はなみずき通駅です。地下鉄東山線の東の終点である藤が丘駅でリニモに乗り換えて,1駅3分で行くことができます。リニモは通常時間帯は8分間隔で運転されていますので,アクセスは便利です。名古屋駅から行く場合は,乗り換え時間も含めて45分ほどの時間を見込んでおけばいいでしょう。はなみずき通駅の南側の2番出口から出てウォーキングをスタートしましょう。
東部丘陵線リニモは,平成17年(2005年)に開催された愛・地球博(愛知万博)の開幕に合わせて建設され,日本初の常電導吸引型(HSST)によるリニアモーターカーとなりました。それまで鉄道が通っていなかった長久手の町の中心を通るように路線がのび,長久手の町の発展に大きく寄与しています。
はなみずき通から西へ線路沿いに進んでいきます。上り坂を進んだ「桜作」交差点を左折します。長久手市は急速に住宅開発が進んでおり,今回のコースも新しい住宅地を歩いていくコースになっています。
「桜作」交差点から150mほど南下し,「西小学校北」交差点を越えた次の小学校の手前の筋を右折して100m弱進むと右手に豊善院(真言宗醍醐寺派)があります。薬王山と号し,文禄3年(1594年)に没したという大徳法印によって創建され,京都の醍醐三宝院に属する修験寺院といい,地元では古くより「お薬師様」と呼ばれ親しまれているといいます。本尊の薬師如来は室町時代の作といい,古い十二神将の像もあるといいます。地域で養蚕が盛んだった頃は蚕霊尊も祀られていたといい,秋葉信仰の秋葉大権現や常夜灯なども設けられています。
豊善院の先を右折し,続くバス通りを左折します。その先の「作田二丁目」交差点を右折して,長久手西通りを北上していきます。並木も整えられている新しい住宅地の道を進みます。
長久手西通りを300mほど北上して,「塚田」交差点に至ったら左折し,続く筋を右折します。住宅地の道を抜けて200m弱進むと左手に聚福院(曹洞宗)があります。海潮山と号し,天正12年(1584年)に清須にて開創されたといいます。その後,昭和42年(1967年)に現在地に移されたといいます。本尊は聖観世音菩薩で,室町時代作ともいわれ,尾張33観音の31番札所にも指定されていて多くの人々から信仰を受けているといいます。閑静な住宅街の中の静かな寺院で,落ち着いた空気を味わうことができます。
聚福院から300mほど北上した左手には大平公園があります。ウォーキングの休憩地点としても活用できます。
大平公園からさらに下り坂を100mほど進むと鴨田川に突き当たります。ここを左折して続く細い橋を渡り,道なりに北上していきます。住宅地の道が複雑に入り組み,道を間違えやすいです。
鴨田川を渡る小さい橋から道なりに150mほど進んだ突き当りで,左側の横断歩道を渡ったのちに右折すると,少し先のところに木下勘解由塚[市史跡]があります。天正12年(1584年)に行われた小牧・長久手の戦いの史跡の1つであり,この地で戦死したという木下勘解由利匡を祀ったものです。徳川家康と豊臣秀吉が争った長久手の戦いで秀吉方についていた三好秀次(のちの豊臣秀次)は,ひそかに家康の領地である岡崎を攻めるために進軍していたところ,白山林の戦い(現,尾張旭市)にて家康軍に攻められて敗走しました。討ち死にしそうになったところ,この地で家来の木下勘解由利匡に出会いました。彼は秀次に自分の馬を差し出し,兄の木下左衛門祐久とともに家康軍と戦い,この地にて戦死したといいます。信吉は馬を差し出されたおかげで一命をとりとめ,命からがら犬山へ逃れました。この兄弟の武勇を讃えるため設けられたのがこの塚といいます。
木下勘解由塚からは並木道を抜けて東に進んでいきます。新しい住宅地が広がり,かつてここで大規模な戦が行われた面影はまったく感じられません。
100m強進んだ「西鴨田橋北」交差点を左折し,続く筋を右折して住宅地の道を進むと左手には段ノ上公園があります。新しい住宅地に設けられた公園です。
段ノ上公園から東に200mほど進むと左手に原邸公園があります。公園の手前の交差点を左折して,公園の西側から入っていきましょう。香流川の河畔に設けられた,この付近では大きな公園になります。ウォーキングの際の休憩地点としても活用しましょう。
原邸公園から北上して,公園の北側を流れている香流川を渡ります。川の周辺には遊歩道も設けられ,市民の憩いの場になっていることが伝わります。
さらに200mほど北上して「北小学校北」交差点を抜け,2本目の北中学校の前を通る筋を右折します。ここから先は長い田園地帯の道になります。田園地帯の北側には,愛知医科大学と附属病院の立派な建物が見えています。
北中学校の前の筋を抜けて田園地帯を700mほど進んでいくと,左手に直会神社があります。田園地帯の中にある小さい社で,東に位置する石作神社の摂社になります。創建は不詳ですが,石作神社の摂社として長い歴史を有するといい,石作神社の大祭の終了後には,関係者一同が会食を行うという直会の儀が行われるといいます。
直会神社から右折して南方向に400mほど進みます。県道に突き当たったら左手に進み,続く信号の筋を右に入って一方通行の道を進むと左手に豊龍院(真言宗醍醐寺派)があります。医王山と号し,当初は薬師堂と呼ばれていたものが,延宝元年(1673年)頃に現在地に移されたといい,先に訪れた豊善院と同様に醍醐三宝院の修験寺院だったといいます。本尊は薬師如来坐像で,ともに祀られている十一面観音像や不動明王とともに室町時代の貴重な仏像といいます。東に位置する立石池の堤上には,醍醐三宝院門跡の多田実円が書いたという碑が設けられており,この付近は醍醐三宝院に関連する土地柄になっているといいます。
豊龍院から県道に戻り,西に400m弱進んだ「石田」交差点を右折します。そのまま100mほど南下した右手には長久手市文化の家があります。平成10年(1998年)に長久手町文化の家としてオープンした総合文化施設で,森のホール・風のホール・光のホールの3つのホールを始め,展示室や会議室などを備えた総合施設になっており,演劇やコンサート,美術展などの各種イベントが行われている市民の文化交流の場になっています。建物は第8回愛知まちなみ建築賞も受賞している特徴ある建物になっています。文化の家の名前の由来は,市民全体の「家」となってほしい,
市民が「我が家」を感じるような親しみ深い施設になってほしいという願いが込められているといい,20世紀中頃、フランスに起こった地方からの文化発信運動「文化の家運動」に因んでいるといいます。入口にはレストランも設けられており,ウォーキングの際に立ち寄ってもいいでしょう。
長久手市文化の家から南下したところにある歩道橋を渡った先には桧ヶ根公園があります。高台に設けられている広い敷地面積を誇る公園で,公園東側まで進むと高台から景色を見ることもできます。水の流れる水路もあり,市民の憩いの場になっています。
公園の南側には,堀久太郎秀政本陣地跡[市史跡]の碑と案内板があります。この公園は天正12年(1584年)の小牧・長久手の戦いの際に,秀吉方の武将である堀秀政が本陣を置いた場所といいます。天文22年(1553年)に美濃国に生まれた堀秀政は,13歳にて織田信長に仕え側近として頭角をあらわし,天正3年(1575年)の越前一向一揆の討伐に参加するなど活躍しました。本能寺の変の後には秀吉ともに山崎の戦いで明智光秀を打ち破り,柴田勝家と争った賤ケ岳の戦いでも活躍して近江佐和山9万石が与えられました。小牧・長久手の戦いの際は,白山林の戦いで三好秀次が敗北したとの報を聞いてすぐさまこの桧ヶ根に布陣し,家康方の榊原康政,大須賀康高らの追撃隊打ち破ったといいます。その後,家康が進軍して馬印の金扇がきらめくのを見て,戦況が不利と判断して秀吉本陣のある小牧方面に引き上げていきました。公園の東側の眺望を見ると,この地が敵味方の位置を見分けられる絶好の場所だったことが今でも想像できます。
桧ヶ根公園の南側には,長久手市の中央図書館があります。長久手の郷土資料などを調べたりするのにも活用することができます。
長久手市中央図書館の南側の「中央図書館南」交差点を右折し,続く筋を左折します。そのまま100mほど進んだ2本目の筋を左折します。50mほど進んだ左手の歩行者専用道に入ってそのまま突き当りまで進み,右折して続く筋を左折し川を渡ります。そのまま200mほど進んだ左手には後田公園があります。桜に囲まれ,水のせせらぎもある公園で,長久手の住環境のよさを感じられる公園になっています。
後田公園から100mほど南下した「桜作」交差点を左折して下り坂を100mほど進むと,左手に常照寺(真宗高田派)があります。仙寿山と号し,創建は不詳ですが元は真言宗だったといい,長湫村の村寺として住民から信仰を受けてきたといいます。高田本山専修寺真如のでした恵寿(藤原志摩守)が長久手の戦いの戦死者の菩提を弔うために寺の住職となり,寺号を仙寿坊から改めて常照寺としたといいます。境内に並ぶ供養塔は長久手の戦いの際の戦死者のものもあるといい,兵士らを弔う無縁仏もあるといいます。
常照寺の南には,スタート駅であるはなみずき通駅があります。藤が丘駅まで1駅3分で戻ることができ,本数も昼間は8分に1本運転されていますのでアクセスは便利です。名古屋駅までは約45分で戻ることができます。