日本のシャーマニズム
考察
シャーマニズム
シャーマニズムの定義
日本のシャーマニズム

他界
真間手児名
 桜井徳太郎編『シャーマニズムの世界』において和田完氏は
「アイヌのシャマニズム」について書かれている。
アイヌにおいて巫術は、ツスと呼ばれている。
樺太アイヌにおけるツスはカチョと呼ばれる太鼓、ばち、けずりかけ製の巫帽、
払子や装身具として使われるイナウ、ツス中にシャマンが飲むヌフチャチャ
(イソツツジを入れた飲料)、守護霊や病霊の「よりしろ」として用いられる木偶、
供犠用の犬などが用いられ、またツスの形式もシャマンのセアンス
(心霊術の会)としてかなり整ったものであるらしい。
というのは、太鼓の連打による忘我状態への誘導、守護霊の招致、
激しい舞踏様の動きと様々な精霊のしぐさや音の模倣、託宣、守護霊の帰還
などの重要な要素がツスの手続きから明瞭に弁別することができるらしい。
ツスを行うツスクルは個人的な病気の診断治療が主な仕事であったが、
古くは猟運、天候などの予言や、痘瘡などの流行病に対する
集団的な強化儀礼を司祭することもあったという。
性別に関しては、1909年にピルスツキが公表した論文によれば、
彼が遭遇した8名のシャマンのうち6名までが男性であったらしい。
だが、第2次大戦中の調査や和田氏の得た情報からは、
男性のツスクルの存在は確認できなかったという。
 以上のように典型的なシャマニズムの特性を持つ樺太アイヌのツスに対し、
北海道アイヌのツスにはかなり混乱した現象型しか認められないという。
この本が出た当時(1978年)でもツスクルと呼ばれる女性に出会うことが
あったらしいが、彼女たちは数珠を手にし、念仏を唱えてかんがかりし、
死霊の口寄せを行ったり、時には竜神様のお告げを述べたりしたそうである。
どちらかというとイタコなどに近いものの様である。
 続いて前掲書内の楠正弘氏の「イタコとゴミソ」より
正にイタコとゴミソについて記す。
イタコもゴミソも簡単にいうと町巫女のことらしい。
彼らは、歴史的・地理的条件によって、
それぞれ違った語りの唄、特種な用語、道具、服装を使用する。
イタコ、ゴミソという名称が日用語として通用しているのは
青森県、秋田県の一部であるという。
イタコは盲目の女性でホトケ(死者)やカミの口寄せを主な役目としているが、
ゴミソはカミオロシや御祈祷、さらに病気の治療に携わることもあるという。
この地方では社会的常識として二つの巫女が機能的に分類されているらしい。
また、イタコはほとんどが女性であるがゴミソには男性もいる。
そして、イタコは憑依(ポゼッション)より、
ゴミソは超越(トランス)により神的なものの意向を媒介して信者に伝えるという。
イタコにおいてもゴミソにおいても、その成立段階には不幸が付きまとっている。
イタコは幼少のころに怪我や病気によって失明する。
成人以前に修行をはじめなければならないイタコは、
身体的欠陥を持った状態で親族集団の合意の元に成立し、
本人はこれに仕方なしに同意するという。
年齢にもよるだろうが、本人に意思決定権はないようだ。
師匠の影響などで次第にイタコになる強い決心を起こすが、
イタコになるにはカミツケの儀式において、師匠を中心とする職能者の前で、
彼女たちの体に神仏が乗り移るところを実証しなければならない。
これによってイタコとなった女性の周辺には、
イタコとして彼女を信頼する任意的信仰集団が形成されるという。
津軽のイタコは秋田のイタコと違って結婚生活を営むらしいが、
未婚であることが多いイタコに対してゴミソは、
全てが女性というわけではないが、既婚の女性である。
身体が虚弱であったり、結婚後に病気にかかったり、
家庭事情が悪くなって離婚となる。
これらのことが原因となって神経症的になり、ゴミソへの道を歩むこととなる。
彼女たちは、社会生活の敗残者、被疎外者、
帰る場所のない厄介者としての人生経験から出発する。
このような状態から彼女たちは神仏にすがり、
人並みの人生へと帰る道を求めるのだという。
ゴミソはイタコと違って儀式を経て地域社会の中に送り込まれるのではない。
彼女たちはゴミソであることを自分で証明していかなければならないのだ。
ゴミソは自分が活動すべきテリトリーすら自分で見出さなければならない。
イタコと認められても、地域社会の信頼を得られない者もいるし、
ゴミソになろうとして、ゴミソモドキやゴミソマガイとなっていく者もいるらしい。
特にゴミソは決して安定した職業ではない。
イタコはその職につくと一生そこから抜け出ることはできないらしいが、
ゴミソはいつでも抜けることができるようである。
イタコにしてもゴミソにしても簡単な職業ではないということは確かである。
<参考文献>
 桜井徳太郎,1978,「シャマニズム研究の諸問題」桜井徳太郎編
 『シャーマニズムの世界』春秋社,pp.1‐45.

 カーメン・ブラッカー著,秋山さと子訳,1979,
 『あずさ弓−日本におけるシャーマン的行為−(上)』岩波書店,pp.153‐170.

 和田完,1978,「アイヌのシャマニズム」桜井徳太郎編
 『シャーマニズムの世界』春秋社,pp.218‐219.

 楠正弘,1978,「イタコとゴミソ」桜井徳太郎編『シャーマニズムの世界』
 春秋社,pp.232‐249.
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